2020 Fiscal Year Research-status Report
「関係人口」創出を目指す「関係案内人」の役割や創出評価の枠組形成に関する実証研究
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20K12412
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩本 泰 東海大学, 教養学部, 准教授 (70548007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室田 憲一 東海大学, 教養学部, 教授 (00328098)
内田 晴久 東海大学, 教養学部, 教授 (50232856)
藤野 裕弘 東海大学, 教養学部, 教授 (60219037)
藤吉 正明 東海大学, 教養学部, 教授 (70349322)
北野 忠 東海大学, 教養学部, 教授 (80407999)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方創生 / 消滅可能性都市 / 持続可能性 / まちづくり / 関係人口 / 関係案内人 / 持続可能な地域づくり / 環境教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方圏を中心に人口減少や高齢化による地域づくりの担い手不足等の課題に直面している。こうした状況において、総務省は「関係人口」の概念規定と創出により、地域と多様に関わる人々の地域づくりへの可能性を期待している。 本研究は、関係人口の創出に向けた「関係案内人」の役割や創出に向けた評価の枠組みを明らかにすることを目的とし、特に総務省関係人口創出事業等の事例分析により、地域の持続可能性につなげる関係のあり方について理論化を図り、これからの関係人口創出に向けて特に「関係案内人」の役割や取り組みの成果を測定するため、活用可能な指標を提案することを目指して研究活動を展開している。 これまで本研究では、消滅可能性都市など、「関係人口」概念創出に至るこれまでの社会的背景や基本的な考え方の整理、創出事業のモデル区分の確認、「関係人口」の潜在的な割合、「関係案内人」の機能と期待される役割について、先行研究のレビューを行った。その上で、2019年度(令和元年度)モデル事業採択団体において、「裾野拡大型」で採択された神奈川県松田町のケーススタディ分析を実施した。松田町では、「リカレント教育の場」として地域課題の解決を考える学び合いにより「リカレントカフェ事業」を実施、地域の関係案内人と交流し、様々な講座や参加型アクティビティ(ワークショップ事業)が開催され、各種の事業を通じた「関係人口」創出に一定の成果があったことがわかった。 こうした成果と今後に向けての課題について、本学大学院(人間環境学研究科)の研修会において、松田町定住少子化担当室担当者に話題提供してもらい、本学学生や教員が関係案内人として機能することの意義について、議論した。本研修会には、「関係人口」創出事業の先行自治体である秋田県鹿角市政策企画課鹿角ライフ促進班担当者も参加していただき、両自治体での意見交換も行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまで「関係人口」創出の意義や期待される可能性などに関するレビューを行うことで、こうした分野の研究は、地域行政やまちづくり関係団体による実務的な試行錯誤が中心で、研究としては発展途上であることがわかった。本研究では、現在までに特に2019年度(令和元年度)モデル事業採択団体において、「裾野拡大型」で採択された神奈川県松田町のケーススタディ分析を行い、具体的な考え方や進め方、「関係案内人」の役割や創出評価に向けた基礎的な枠組の仮説形成を行うことができた。 一方で、2020年より拡大した新型コロナウィルス感染症拡大により、学務の増大、地方移動を伴う出張の自粛とフィールド調査延期により、当初計画していた予定通りに進められていない。そのため、新しい生活様式に対応した、新しい研究手法の再検討を迫られることとなった。また、新しい生活様式は、働き方や生き方に変化が起き、これまで一極集中が続いていた首都東京で人口の社会増減において転出超過が起きるなど、社会的な状況に変化が生じている。これらは、これからの「関係人口」創出に向けて、新たな観点による研究の進め方が求められている状況にある、と考えている。その上で、「関係人口」創出事業の先行事例の一つである秋田県鹿角市、またフェアトレードタウンとして、まちぐるみでフェアトレード講座等を通して学び合いをしている神奈川県逗子市に研究協力を依頼、その他の自治体の動向についての情報収集と新たな研究ネットワークの構築を目指して、新年度「関係人口」創出に関わる調査(成果と課題の整理)を実施する準備に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
地域行政機関を通して、コロナ禍により大都市圏に居住することが大きな感染リスクとなることに気づいた市民から、移住相談を受けることが増加しつつある、という情報を得た。こうした状況は、地方の過疎化問題の解決とこれからの地方創生、持続可能な地域づくりに向けて、前向きな状況にあるといえる。 一方で、在宅時間の増加により、多様な情報ツールによる移住先の地域情報発信の重要度が増している。すなわち、地域との具体的な人間関係、仕事、通学・通園、子育て環境、治安、移住先住居等の具体的な情報を含んだシティプロモーションが、「関係人口」創出のきっかけになると考えられる。そうした意味で「関係案内人」は、地域とのつなぎ役、すなわちファシリテーターとしての機能がさらに増していて、協働的な地域づくり仲間の形成に貢献する役割が求められる状況にある。 そこで今後、特に新たな研究観点として、インターネットツールを用いた「オンライン関係人口」創出に焦点をあて、地域とのかかわりを持つきっかけづくりとなるプラットフォームとなるポータルサイト構築に着手する予定である。具体的には、サイトを通して、地域概要や地場産業、子育てを中心とした住環境、まつりなどの地域イベントなど、地域の情報を「関係案内人」が取材し、レポーターとなって発信、地域との関わりを誘発するきっかけづくりをめざす。オンラインで関係人口の裾野を広げ、オフラインへつながりづくりをする(バーチャルからリアルへ)、また、オンラインで接触を重ねて地域とかかわりを持つ意欲を高め、持続的な関係を築く取り組みを「関係案内人」と共に推進することをめざす。こうした一連のプロセスの効果、評価検証を行うことで、新しい生活様式に対応したこれからの「関係人口」創出の枠組み形成につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、計画していたフィールド調査・インタビュー調査(含む地方出張を伴う旅費使用)が実施できず、研究計画に変更(遅延)発生、計上した予算の多くが使用できなかったため。 次年度は、コロナウィルス感染症の収束状況を鑑み、前年に予定していた地方出張によるフィールド調査・インタビュー調査のための旅費と、コロナ禍の社会情勢変化に伴う新たな研究観点で創出された「オンライン関係人口」創出のためのプラットフォームづくりに関する研究委託費、シティプロモーションのための経費、専門的知識の提供を得るための講師謝金、その他に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)