2023 Fiscal Year Annual Research Report
Tourism in the Anthropocene: Transition and Challenges of Tourism towards Decarbonized Societies
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20K12419
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
片瀬 葉香 九州産業大学, 地域共創学部, 准教授 (40513263)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人新世 / ツーリズム / 地球システム / 地球温暖化 / 脱炭素社会 / ソフトツーリズム / 持続可能なツーリズム / ヨーロッパアルプス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果(令和2~4年度/科研)をまとめた書籍の出版(『人新世とツーリズム―地球とツーリズムの未来を考える』、2024年4月刊行)に向けて作業を進めた。本書では、「人新世という時代に私たちはいかに生活し、地球システムをいかに維持していくべきか」、「地球を改変する力、営力となったツーリズムは人新世時代にどう向き合うべきか」という問いに対して、第1部「人新世という時代」において、人新世議論の発端となったクルッツェン(P. J. Crutzen)らによる報告を検討し、産業革命以後3つのステージに区分される人新世時代の歴史的変遷を概観した。そして、ミュラーによるインタビューに応じて、クルッツェン自身が語った人新世の本質を明らかにした。第2部「人新世時代のツーリズム」では、1970年代からのツーリズムによる地球システムへの負の影響を指摘した。次いで、ツーリズムは気候の恩恵を受けて発展してきたが、一方でツーリズムが気候変動と地球温暖化に影響を及ぼしてきたことを明らかにした。そして、今や地球を改変する営力となったツーリズムは、地球システムにいかに関わるべきかについて検討した。第3部「人新世と持続可能なツーリズム」では、ヨーロッパアルプスにおけるツーリズムの変遷と人新世時代の関係を検証し、ツーリズムの現状を明らかにした。次いで、1970年代からのマスツーリズムの発展に対して、もう一つのツーリズムとして、環境に負荷を与えることの少ないソフトツーリズムが生まれた背景とその今日的意義を考察した上で、持続可能なツーリズムの可能性を明らかにした。今後の課題として、第3ステージの「地球システムの管理者の時代」に転換したことを認識し、地球をケアする地球愛とは何かという観点から、将来世代のみならず、現在を生きる人びとにとって、倫理的で公正な新しい社会の改革をいかに推進すればいいのかを検討したい。
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