2020 Fiscal Year Research-status Report
歴史的参詣道の景観資源性を活かした新たな自然歩道ネットワークの計画論に関する研究
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20K12438
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小野 良平 立教大学, 観光学部, 教授 (40272439)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 景観 / 参詣道 / 自然公園 / 自然歩道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、観光計画論、観光資源保全論の立場から、自然公園等の自然歩道に活かし得る歴史的参詣道の特性は何かということを捉えることをねらいとして、霊山・霊場などの信仰空間へ到達する、あるいはそれら相互を繋ぐ歴史的参詣道を対象に、その立地環境と周辺の自然環境との視覚的繋がり(可視性)を指標とした景観特性を明らかにし、その資源性を自然歩道のネットワーク計画に活用する検討を行うことを目的とする。令和2年度は、事例対象地の設定のために、候補地に対する予備的作業として、旧来の参詣道ルートの同定・推定およびルート上の視点の選択方法の検討、さらにその視点群からの可視特性の試行的把握を実施した。具体的には、吉野熊野国立公園に関わる、熊野古道のうち那智勝浦~那智大社間の参詣道、および丹沢大山国定公園に関わる、大山阿夫利神社に至る「こま参道」から大山山頂までの参詣道を対象に実施した。参詣道の原ルートを現地形図上で推定し、地形やルート線形の変化点を視点候補として抽出し、その上で国土地理院・基盤地図情報の数値地図を活用し、対象地を含む広域の範囲において、信仰対象となる山岳山頂周辺の各視点からの可視領域、およびそれ以外の重要な自然環境要素(海など)の可視領域等を重層させて可視頻度を検討した。その結果両事例とも、参詣道上からそれぞれの信仰対象(滝や山頂など)に加えて海域への可視性などに特徴がみられることが確認され、次年度以降の本調査に向けた一定の準備・試行を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗が遅れている最大の要因は、新型コロナウィルス感染症(covid-19)の蔓延による研究遂行への影響である。移動の制限・自粛にともない、現地踏査による景観調査が困難であったことに加え、参詣道の旧ルート、原ルートを同定するために必要な、地域固有の史資料を収集・確認する現地調査も行うことができず、実施可能であったのはウェブ上のオープンデータを活用したGIS上の解析作業にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の拡大・収束の動向を見極めつつ、対象事例を追加し、特に最も規模の大きな事例として想定している四国八十八箇所の霊場を結ぶ、瀬戸内海国立公園、足摺宇和海国立公園、石鎚国定公園に広く関わる「四国遍路」の検討に着手し、GISによる可視特性等の解析作業を先行的に実施することで研究を前進させる。ただし参詣道の旧・原ルートの同定および現地においての景観調査は必須の作業であるので、感染防止策に十分留意しつつ、また法的ならびに社会的規範の範囲内において、現地調査の実施計画を慎重に立てこれを実施する。このことにより予備的試行的調査の段階にとどまった令和2年度の状況から、本調査の段階に研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、予定していた現地調査が全く実施できなかったため、旅費を中心に使用できなかった費目があり、次年度使用額が生じた。新型コロナウイルス感染症の動向を注視しつつ、可能な範囲で現地調査計画を立て、感染対策を十分講じた上で調査を実行する計画である。
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Remarks |
2020年度日本造園学会全国大会ミニフォーラム「名勝から考える:眺める場所と風景の保全・継承」(2020年5月24日)において、本研究課題に関係した熊野古道及び妙高道に関する話題提供を行った。(ランドスケープ研究84(2),159,2020年に抄録掲載)
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