2022 Fiscal Year Research-status Report
原発事故被災地における生活・コミュニティ再構築の展開と課題―ジェンダーの視点から
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20K12452
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
岩崎 由美子 福島大学, 行政政策学類, 教授 (80302313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 福島第一原発事故 / 生活再建 / 農産加工 / 女性農業者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、福島県における原発事故被災地での生活・コミュニティ再構築の展開過程と課題について、食と農の視点から検討する。とくに、被災地の地域復興に向けて様々な活動を牽引しネットワークを広げている女性農業者に焦点を当て、彼らの活動がどのような背景のもとになされ、活動の発展に向けてどのような課題があり、課題解決のためにいかなる支援が必要か、といった諸点について実態調査により明らかにする。また、被災地支援を契機として福島県への移住・二地域居住を選択した人々にも着目し、地元民と関係人口の連携による地域復興の可能性を検討することで、オルタナティブな地域復興の展開可能性と支援機関の役割について考察することを目的としている。 本年度は、福島県二本松市、飯舘村、浪江町、大熊町における女性農業者を中心とする営農や農産加工の再開の取り組みについて聞き取り調査を実施した。あわせて、地域おこし協力隊等外部人材の取り組みや次世代の動きについても状況を把握した。また、これらの取り組みを支援する行政等の関係機関への聞き取り調査を重点的に行い、生活再建とコミュニティ再生に向けた取り組みの実態と今後の政策的課題について分析を加えた。 原発事故被災地では、除染とインフラ整備という大規模なハード事業を基軸とする空間の復興は進んでいるが、帰還を諦めた人々も数多く、10年以上経過した今でも、避難者にとって復興は実感を伴ったものにはなっていない。他方で、女性農業者らによる営農活動や農産加工活動の再開は、ハード事業を中心とした復興とは異なり、厳しい状況の中で分断された人々を食と農でつなぎ直し、地域でかつて当たり前に営まれてきた暮らしを取り戻そうとする動きであり、彼女たちが実践する人と人とのつながり、人と自然とのつながりの回復こそが、個々人の生活再建とコミュニティ再生の基礎となることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年は他県に避難した女性農業者へのヒヤリング調査を実施する予定であったが、新型コロナ感染の影響で現地調査が実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでの調査結果のとりまとめを行い、不足している項目についての予備調査を行って研究成果の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は県外避難者への聞き取り調査を予定していたが、新型コロナ感染拡大の影響で実施できなかったため。未使用額は次年度の出張旅費に充てる予定である。
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