2021 Fiscal Year Research-status Report
管理職の役割・機能とジェンダー:日本の女性管理職比率の低さの要因分析
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20K12453
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
金井 郁 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (70511442)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 管理職 / 短時間管理職 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、生命保険会社の管理者層ー労働者の関係について後発型生保の管理者層(男性)-労働者(男性)のパターンと、伝統的生保の管理者層(男性)ー労働者(女性)のパターンに分けて調査を行った。 その他、管理職の役割と機能に関するサーベイを行ったうえで、短時間管理職の可能性について検討した。管理職の労働時間は一般従業員に比べても長く、有給取得日数も短い。このことが、(ケアを担う)女性たちが自ら管理職昇進を望まないことにつながる一方で、(ケアを担う)女性たちに管理職は無理であるという企業や官公庁側の判断や評価にもつながり、女性管理職比率の低さの要因の一つと考えられる。そもそも長時間労働しなければつとまらない管理職のあり方自体を見直す必要がある。日本企業における管理職の役割や機能については、プレイイングマネージャーが多く、そのことがマネジメント業務を行うことや部下の育成を行うことの支障となっていることが指摘されている。 日本企業で労働時間が短いことと管理職はいかにして可能となるのかを検討するため、短時間管理職に注目した。事例企業で短時間管理職が誕生しているのは、管理職としての成果はフルタイム勤務の管理職と変わらないもとで、時間だけ短くするものである。そこで、短時間管理職自身の工夫で、部下とのコミュニケーションをはかりながら、部下の育成を兼ねながら権限委譲することで、プレイイングマネジャーにならず管理業務にのみ集中していた。こうしたやり方は短時間の管理職を生み出す普遍的な条件とはならないと考えられるが、日本の職場においても、子どもの迎え時間といった退勤時間が強制的に決まっている状況の中で、仕事のやり方を意識的に変更することで、一般的には不可能だと考えられているプレイイングマネジャーから脱し管理業務への集中が可能となることも示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で新規の調査依頼が難しい中で、今までのつながりのある企業への調査しか実施できていないため、実証研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
管理者層―労働者の関係のジェンダー化について、従来からの調査からまとめ、理論的検討まで行う。 管理職の役割や機能とジェンダーについては、コロナ禍で変化の兆しもあるため、コロナ禍の管理職の役割と機能、といったテーマを前面にして、ジェンダー視点からの検討を行う計画である。
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Causes of Carryover |
国際学会の旅費及びその際にドイツでの調査の旅費を考えていたが、国際学会がオンラインになり、国外旅費を使用しなかったため使用額の差が生じている。国際学会の有無は流動的なため、開催状況をみながら、国際学会や海外での調査に関する予算使用は検討する。一方で、国内学会や国内での調査は再開する見通しであるので、国内旅費への使用は行う。
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Research Products
(7 results)