2022 Fiscal Year Research-status Report
セクハラ・性暴力問題の女性のエンパワーメントによる解決のための比較社会学的研究
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20K12460
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
牟田 和恵 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (80201804)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 女性の安全 / ジェンダー平等 / トランスジェンダー / スコットランド / 韓国 |
Outline of Annual Research Achievements |
性暴力やセクシュアルハラスメントの問題化の歴史とその意義について論じた自論文はじめ、教育現場のセクハラや同性愛者への差別、議員クオータや夫婦別姓選択制等のジェンダー平等政策への抵抗について幅広く論じた『フェミニズム・ジェンダー研究の挑戦:オルタナティブな社会の構想』をオープンアクセスの電子書籍として公刊した(22年5月)。 22年3月より10か月間、英Glagow Caledonian University(以下GCU) において在外研究の機会を得たため英国も比較社会学的研究の対象に含め、(1)ケンブリッジ大学東アジア研究所においてAttack on Gender Studies in Japanと題した講演を行い情報交換を行った(10月31日)、(2)性暴力問題の一環としてトランスジェンダーと女性の安全に関する問題についての検討を始めた。GCUのあるスコットンドは英国内で高度な自治が認められており、イングランドよりもプログレッシブなトランスの権利を認める法制度がすでに施行されており、とくに性別移行をより容易にする法が2022年にスコットランド議会で可決された(ただし現在、英国会によりsuspendされた状態)。これにより公共スペースの更衣室やトイレ、矯正施設等での性自認による利用使用がさらに進行した。女性の安全の確保を理由としてこれに反対する女性グループは、Let Women Speak等と名付けられた催しをスコットランドならびにイングランドで実施し、トランスの権利派と物理的暴力的な接触を含む葛藤を生じる事態となっている。ここにはイギリスからの政治的自立をめざすスコットランドの政治状況も背景にある。 政治状況は異なるが日本でもLGBT理解増進法が成立見込みで、類似の状況が出来することも予想され、スコットランドの事情を知ることは日本にとって示唆的であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項に記した通り当初の研究課題から若干幅を広げて研究を進めているため、予定通り進捗したとは言い難いが、女性の安全・暴力とジェンダーという問題をより深めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
スコットランドはトランスジェンダー問題と女性の安全の葛藤あるいは両立というテーマにとって先駆的でもありまたかつ教訓を与える事例であるのでさらにスコットランドについての情報収集をすすめる。またかつ、本研究の中心的事例として考えていた韓国は、この点においては「女性の安全」を最優先しむしろトランスの権利という点からは「遅れた」状況を呈してもいる。これら両極とも言える事例から日本において妥当な取るべき途を探る。 以上の目的を達するために、2023年度は、スコットランド調査およびソウル調査を計画している。調査協力者は、Sara Cantillon氏 (GCU教授) パク・スヨン氏(韓国女性開発院主任研究員)を予定している。
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Causes of Carryover |
イギリス在外研究の機会を得て、研究計画に変更が生じたため
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Remarks |
大阪大学学術レポジトリ―OUKA収載
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Research Products
(3 results)