2023 Fiscal Year Annual Research Report
過渡期的発展段階における男児選好の構造的要因についての研究
Project/Area Number |
20K12463
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
佐野 麻由子 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (00585416)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 男児選好 / 階層 / 業績主義 / 競争主義 / 自己決定感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、文化的進化論、家族社会論の「個人化」の議論等より、(1)男児選好は、低層から新興中間層を経て中間層、上層へと階層上昇を果たすにつれて弱まる、(2)個人が【業績主義】、【競争主義】の恩恵を受け、「人生を自分の考えで自由に決められる」という【自己決定感】を得られることが、男児選好を弱める、(3)物質的に豊かになり生存的安心を得られることが個人の家族への依存や家族規範の遵守を弱め、結果として男児選好を弱めるという3つの仮説をたて、2022年9月~2023年3月にネパールで調査を実施した。 分析の結果、同一地域で実施したものの回答者が異なるため、単純な比較はできないが、2012~14年に実施した調査と比較すると、「息子が必要」と回答した人の割合は、6ポイント増加しているが、息子を生むプレッシャー(21ポイント減)、老後の保障(30ポイント減)、財政支援(51ポイント減)、家系の維持(14ポイント減)、葬式の喪主(47ポイント減)、財産分与(61ポイント減)、ダウリーの手段(16ポイント減)、性別判定(16ポイント減)となっており、性別選好の薄れを指摘することができた。 仮説の検証からは、(1)家族の経済的戦略に関わる理由による男児選好は下層において強いが、儀礼上の男児の必要性は上層において強く、階層が上になるほど男児選好が弱まるわけではない、(2)【業績主義】【競争主義】の支持と【自己決定感】は、男児選好スコアを低減させる一方で、家系の維持や財産分与などの実際の息子の必要性を低減させるわけではない、(3)物質的に豊かになり生存的安心を得られた人ほど、結婚や出産を必須とする家族規範を支持する(豊かさが家族への依存を弱める「個人化」を促進するわけではない)という結果を導いた。
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