2021 Fiscal Year Research-status Report
Gender Study on Sovereignty and Consumption in the Arab Gulf States
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20K12466
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
辻上 奈美江 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (30584031)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー / 中東 / 統治 / 再生産 / 消費 / サウジアラビア / 起業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、サウジアラビアを中心とする湾岸アラブ諸国における統治と消費の関連について、ジェンダーの視点から研究することを目的としている。本研究代表者は、女性が主体的に関与する再生産領域のなかでも消費に着目し、女性の消費が女性による起業を促進している現象に着目してきた。本研究期間には、これをさらに発展させて、生権力を掌握する為政者が、女性の購買力に着目し、消費を喚起してきた過程を詳しく検討することを目的としている。 令和2年度までの研究期間を経て、本研究は、湾岸アラブ諸国の産油国の統治について検討する「レンティア国家論」に関連づけてさらに研究することによって、統治と消費との関連を明らかにできることがわかってきた。とくに、レンティア国家論者が論ずる国家資本主義(国家が主導する資本主義)の潮流こそが、国民の消費を喚起していると考えれば、なぜ湾岸アラブ諸国が消費主義社会と化してきたかを容易に理解することができる。 令和3年度は長引くコロナ禍により現地調査が引き続き困難であったが、依頼調査を通じて、現地でのネットワークの維持・強化を図った。また、これまでの本研究は都市部での調査にとどまってきたが、地方での現地調査の可能性を模索し始めたところである。基礎研究では、中東地域に限らずに研究対象を近代と消費の関係から見渡す作業を行なった。さらにサウジアラビアでは家族法(身分関係法)が成立する見込みとなっており、このことが男女、親子など親密圏の関係性に変化をもたらす可能性もある。本研究との関連では、女性のネットワークにも関連すると考えられる。このため家族法についての草案の分析を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長引くコロナ禍により研究代表者による現地調査の実施が難しかったこと、また代表者の都合による休暇期間があったため、当初の予定通りには研究が進んでいない。他方で、昨年度に引き続き英語・日本語による研究発表を地道に続けるとともに、基礎研究に重点を置いて研究を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの状況に応じて現地調査を実施する。サウジアラビアの家族法草案の分析を行うほか、女性のネットワークと消費に関する基礎研究を進める。国内では5月に日本中東学会の年次大会の英語企画セッションにて登壇予定である。海外では、12月に米国で実施予定の北米中東学会(Middle East Studies Association)の年次大会において報告を予定している。
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Causes of Carryover |
物品費:本務先研究費などを使用したため使用を抑えられた。 旅費:コロナ禍で現地調査や学会発表のための海外・国内旅費を使用しなかったため、ゼロとなった。 人件費・謝金:現地調査用に計上した現地調査補助の謝金はコロナにより使用しなかった。また、英文校閲費は本務先の研究費で賄うことができたため未使用となった。他方で、依頼調査を実施し、謝金を使用した。 本年度は、引き続きコロナの状況を見ながらとはなるが、現地調査および海外での学会発表を行う予定である。この際に旅費および人件費・謝金を使用予定である。さらに、中東ジェンダー論関連の書籍が新たに出版されているため、これらを整備する予定である(物品費の使用)。
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Research Products
(7 results)