2020 Fiscal Year Research-status Report
The Analysis of the Gender Gap in Financial Literacy
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20K12467
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
丸山 桂 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (30318878)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金融リテラシー / ジェンダー / 教育投資 / 文化資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金融リテラシーのジェンダー格差の要因について、①金融リテラシーの格差の現状、②子どもの性・年齢別の金融リテラシーの形成過程の分析を通して、今後の教育、社会における具体的な支援策を提言するものである。 研究初年度の2020年度は、金融リテラシ―の形成に関する国内外の先行研究のサーベイおよび金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査」と「子どものくらしとお金に関する調査」の二次分析利用申請とその準備に着手した。まず、金融リテラシーの男女差がいつから始まるのか、そして親の影響をみるために「子どものくらしとお金に関する調査」の分析を行った。その結果、小学校低学年の時点で、すでに親が子どもにお金の話をするという金融教育に関して、親が女子よりも男子に早期から会話をしていることが明らかとなった。また、親とお金の話をする頻度と金銭リテラシーの保有には明確な格差が見られた。 高校生の金融知識の状況を男女比較すると、女子は男子よりも正答率が低い傾向が見られたが、それは誤答ではなく、「分からない」とする回答率が高いために、正答率が低くなっていることが明らかとなった。また、金融知識について「正答」が多い子ども、「誤答」が多い子ども、「分からない」が多い子どもの特徴について分析した結果、誤答が多い子どもの特徴として、金融トラブル経験数が多いこと、自信過剰バイアスや近視眼の傾向が見られた。男女別に分析すると、特に女子では暗算能力との関連性が強く見られた。反対に、「分からない」が多い子どもには、親とのお金に関する会話が少なく、文化資本である本がほとんどない家庭、自分の銀行口座がない、暗算を苦手とする傾向が見られた。男女別に見ると、特に女子で勤勉性、自信のなさとの関連性が強かった。 2020年度には学会報告と研究所内での報告を行った。2021年度にはさらに詳細な結果を学会報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、文献調査と子どもの金融リテラシーに関する調査の二次分析を行った。 (1)文献調査 金融リテラシーの格差の状況およびその要因について、ジェンダーと子どもの教育問題から文献調査を行った。多くの先行研究で女性の方が男性に比べ、金融リテラシーが低いとする研究が多数を占めたが、調査者の無意識のジェンダー観、アンコンシャスバイアスの影響や回答パターンの設定方法で正答率もまた変化するという調査票設計の問題について新たな示唆を得た。また、子どもの性により、家庭における金融教育内容の開始時期、内容の格差があることを複数の先行研究で確認した。 (2)調査の二次分析 新型コロナウイルスによる影響で、特に上半期の研究遂行に支障が生じた。図書館等が閉館されたために文献収集が困難であったことや個票分析のために申請した調査機関が在宅勤務になり、審査に時間を要したため、データ提供時期が遅れた。そのため、分析に着手する時期が当初の予定よりも後ろ倒しになった。その結果、当初、2020年度には2つの調査の二次分析を予定していたが、1つの調査での分析のみとなった。 2020年12月には、国内学会で研究報告を行い、2021年1月には慶應義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターで研究報告を行った。2021年6月にはさらに国内学会での報告を予定し、2021年度の分析によって、遅れを解消する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究第2年目には、子どもと大人の金融リテラシーの二次分析をさらに進めるとともに、研究所年度で着手できなかった「金融リテラシー調査」の二次分析を行う。この2つの調査の分析で、子どもと大人の金融リテラシー格差の現状と要因を把握し、研究第3年度目に実施予定のアンケート調査の調査票設計に着手する。 また、海外の先行研究との比較を通し、よりジェンダーを意識した調査票を設計する予定である。 2021年6月に学会報告を予定しており、そのコメントを踏まえ、研究論文の執筆や投稿への準備を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内出張や調査のための旅費、アルバイトの人件費等の支出を行うことができないなど、研究遂行の行動範囲が縮小された影響が大きい。2021年度については、学会等参加のための旅費、パソコン周辺機器及び書籍等の物品費、論文の投稿費用などに使用することを計画している。
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Research Products
(1 results)