2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Marginal Female Labor Movement and the Labor Market in Korea: Focusing on the 1980s and 1990s
Project/Area Number |
20K12478
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
横田 伸子 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60274148)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新しい労働運動モデル / 市民結社体 / 都市下層 / 社会的脆弱階層 / 超短時間・低賃金労働 / 法・制度、労働組合の保護からの排除 / 雇用されていない労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ禍の影響で、海外渡航、とくに韓国への渡航がかなわず、本研究課題の眼目である、80~90年代の韓国における女性労働運動活動家や女性労働者、フェミニスト運動家に対する海外調査は全くできなかった。殊に、詳細な深層面接によるインタビュー調査が実施できなかったため、テーマに焦点を絞った研究を進めるのは困難であった。 そこで、2021年度は、現在も続くコロナ禍の中での日韓女性労働者の雇用・生活の実態と女性労働運動の新しい流れについて、1980~90年代のそれと比較しながら、現在との連続性及び断絶性について分析した。その集大成が、2021年9月12日にonlineで開催された日韓国際シンポジウム「ジェンダー視点で考える日韓の<働き方改革>」とコロナ禍」である。 本シンポジウムでは、韓国と日本から、研究者、ジャーナリスト、労働運動活動家15人が一堂に会し、日韓女性労働運動の過去と現在について活発な議論が展開された。1980~90年代と比較すると、現在は、日韓両国で「雇用されていない」労働、すなわちフリーランスや自営業者という労働者が爆発的に増え、とくにそれが女性に多いことがわかった。これらの労働者に共通しているのは、その多くが法・制度、労働組合の保護から排除され、また、孤立、分散して存在しているため組織化が非常に難しいことである。これは、80~90年代の韓国の都市下層と共通する特徴である。また、日韓両国において、これまでの長時間・低賃金労働に代わって、細切れ労働による超短時間・低賃金労働がコロナ禍で急速に拡大していることが見出された。これによって、女性や若者を中心に、その日の糧にも事欠く社会的脆弱階層が量産されると同時に、80~90年代の「雇用された」労働者による労働運動とは異なる、「市民結社体」ともいうべき新しい労働運動モデルが形成されつつあることが発見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも書いたように、2021年度は2020年度に引き続き、コロナ禍のため韓国での海外調査が全くできなかった。本研究の主要な内容の一つである、1980~90年代の韓国女性労働運動の活動家や労働者、女性労働運動と緊密な連携関係にあったフェミニスト運動家との深層面接調査もすべてキャンセルとなってしまった。これが本研究の進捗に遅れをきたしている最大の理由である。 そこで、2021年度は、韓国と米国の韓国女性労働問題研究者とonlineによる研究交流を計5回(1回につき2時間程度)にわたって行い、本研究のテーマである1980~90年代の韓国における周辺部女性労働者、とくに家事労働者の組織化に関する研究会を開催した。 また、onlineを通じて、韓国国会図書館、韓国労働研究院図書館、韓国女性政策開発院資料室、梨花女子大学校図書館の蔵書検索を行い、本研究テーマに関連する一次資料も含めた文献資料の渉猟と精読に努めた。しかし、その他の在野の労働問題研究所や女性労働組合、フェミニズム運動をはじめとする市民運動NPOに保存されている文献資料へのアクセスができなかったため、これも2022年度以降の課題として残されているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方策として、二つの方針を考えている。 まず、コロナ禍が終息し、韓国における調査が可能になった場合の研究の進め方についてである。①1980~90年代に活発に労働運動を展開した女性労働運動の活動家及び女性労働者、女性労働運動に影響を与えたフェミニスト運動の活動家に対して、深層面接によるインタビュー調査を、2週間ほどじっくり時間をかけて行いたい。②韓国における在野の労働問題研究所、フェミニズム運動と女性労働運動を展開してきた女性労働組合および市民団体やNPOで、同様に深層面接によるインタビュー調査を行う。③韓国における在野の労働問題研究所や市民団体組織を訪ね、そこに保管、保存されている1980~90年代を中心とした韓国の女性労働運動や女性労働者の労働社会や生活に関する文献資料の渉猟と分析を行う。 次に、コロナ禍が終息せず、海外調査ができない場合の研究の進め方についてである。①韓国の在野の労働問題研究所や女性労働組合、女性労働者会を通じて、1980~90年代の女性労働運動の活動家を紹介してもらい、onlineを通してインタビュー調査を行う。②韓国の在野の労働問題研究所や女性労働組合に依頼して、1980~90年代の女性労働運動の活動家及び女性労働者に対する設問調査を実施する。標本数は100程度を想定している。 研究代表者は、韓国の全国女性労働組合、韓国女性労働者会、韓国女性民友会、韓国労働社会問題研究所、韓国労働研究院と20年以上にわたって、緊密な交流をしており人間関係も十分構築されている。したがって、以上の調査研究は十分に実現可能と考えられる。
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Causes of Carryover |
2020年から始まったコロナ禍により、海外渡航ができず、当初予定していた海外調査研究ができなかったため、2021年度に使用する予定だった助成金を2022年度に繰り越した。 2022年度に、2021年度にできなかった韓国における海外研究調査を行う予定である。具体的には、韓国でインタビュー調査及び設問調査を実施し、資料収集を行う。
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