2021 Fiscal Year Research-status Report
アミロイド線維に対するテラヘルツ自由電子レーザーの照射効果に関する研究
Project/Area Number |
20K12483
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
川崎 平康 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 特別技術専門職 (00363268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 和裕 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (10327835)
入澤 明典 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (90362756)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 自由電子レーザー / アミロイド線維 / βシート / αヘリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、50~100 マイクロメートルの波長域で高出力発振するテラヘルツ自由電子レーザーを用いてアミロイド線維を分解し、アミロイドーシス疾患治療の開発に応用することである。2020年度までの研究では、リゾチーム及びβ2ミクログロブリンのアミロイド線維についてペプチドレベルにおいてレーザー照射効果が認められた。即ち各線維体を基板に添加し乾燥させた後、大阪大学産業科学研究所でテラヘルツ自由電子レーザーの照射実験を行った。その結果、赤外顕微鏡、走査型電子顕微鏡、X線小角散乱法を用いた解析により波長56 マイクロメートルでの照射により、リゾチームとβ2ミクログロブリン共に、βシート構造が減り、αヘリックスが増大したことが判明した(発表論文:日本赤外線学会誌Vol.31, No.2, 2022年,pp52-59)。2021年度では、マウスのふくらはぎ筋肉にβ2ミクログロブリン線維を注射し組織切片を調製した。その組織切片にテラヘルツ自由電子レーザーを照射し、UVSORに設置されている放射光顕微赤外分光法を用いて構造解析を実施した。その結果、マッピング解析によりβシートが増大しαヘリックスが減少した切片領域が複数確認された(論文作成中)。また、分子研のスーパーコンピューターを用いてβ2ミクログロブリンのβシート及びαヘリックスの分子シミュレーションを行い、βシートが解離した後にαヘリックスがエネルギー的に安定に存在し得ることを計算で証明することができた(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度ではペプチドレベル、2021年度では組織切片レベル及び分子シミュレーションにおいてテラヘルツ自由電子レーザーによるアミロイド線維の分解に関するエビデンスを得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究計画通り、研究分担者の群馬大学からマウスから調整した組織切片を得、レーザー分解に関する再現性データを出すと共に、手根管症候群の患者から摘出した組織切片を受け取り、それらの生体組織に対するテレヘルツ自由電子レーザーの照射効果を明らかにする。またヒト由来の試料を調達することが困難な状況になった場合も考え、アミロイド線維と構造が類似しているセルロースやケラチンを代替試料として同時に研究を進める。
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Causes of Carryover |
生体試料の構造解析を行うため2020年度では立命館大学SRセンターにある放射光顕微赤外分光装置を利用していたが、2021年度は光源トラブルが原因となり使用不可能となった。そのため滋賀県までの旅費と装置利用料が必要無くなったことが今回の次年度使用額プラスの主な原因である。
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