2021 Fiscal Year Research-status Report
クラスターイオンに特異的な突然変異誘発と産業応用に関する基盤研究
Project/Area Number |
20K12489
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
長谷 純宏 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員 (70354959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森林 健悟 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 上席研究員(定常) (70354975)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クラスターイオン / 枯草菌 / 突然変異 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
クラスターイオンと単原子イオンで生じる突然変異の特徴を比較するため、生存率が0.1から0.01になる線量で2 MeV H2+、1 MeV H+及び340 keV H+を照射して得られた生存コロニーからDNAを抽出し、全ゲノム解析を実施した。得られた配列データを枯草菌のリファレンス配列にマッピングし、GATK、Pindel及びBreakDancerアルゴリズムを用いて変異を検出した。非照射区に比べて照射区での変異率は13から23倍に増加した。変異率と生存率には負の相関関係がみられた。非照射区では塩基置換のみが検出されたのに対し、照射区では塩基置換に加えて、欠失、挿入及び染色体構造変化が検出された。照射区で検出された塩基置換では、GC→AT、AT→TA及びGC→TAの頻度が比較的高く、GC→CGの頻度は低かった。欠失では1塩基の欠失が最も高頻度であり、欠失のサイズが大きくなるに従って頻度は低下した。構造変化は変異全体の1.5から8.0%を占めていた。計21件の構造変化を検出し、20件の全体構造を推定できた。20件の構造変化のうち7件は主要な再結合点が2ヶ所のシンプルな逆位で、主要な再結合点が3ヶ所、4ヶ所及び5ヶ所のより複雑な構造変化がそれぞれ9件、3件及び1件確認された。理由は不明だが、2 MeV H2+及び340 keV H+に比べて1 MeV H+での構造変化の発生頻度は2倍以上高かった。しかしながら、これらの実験を通じて、クラスターイオンと単原子イオンの間で変異の特徴に関する明確な差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クラスターイオンと単原子イオンで生じる突然変異の特徴について、全ゲノム解析では明確な差を見出すことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
クラスターイオン特有の照射効果を見出すため、DNAを試料として真空チャンバー内で照射し、照射により切断されたDNA断片長の分布を評価する。
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Causes of Carryover |
主に新型コロナウイルス感染拡大の影響により旅費の使用がなかったことによるものであり、次年度の旅費及び消耗品購入に使用する。
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