2020 Fiscal Year Research-status Report
磁化ダイナミックス計測と3次元計測に向けた軟X線MCD顕微鏡のイメージング法開発
Project/Area Number |
20K12492
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
小谷 佳範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 主幹研究員 (10596464)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 軟X線顕微鏡 / ナノ集光イメージング / 画像信号処理 / MCD |
Outline of Annual Research Achievements |
試料の磁気情報を描画できる軟X線MCD顕微鏡装置において、二次元像のコントラストは組成分布、磁化の大きさと向き、凹凸および表面の仕事関数が起源である。このうち組成分布は光エネルギーの選択によって、磁化は円偏光のヘリシティ選択によって、仕事関数は試料バイアスによって、それぞれコントラストへの寄与を任意に変更できる。このことはコントラストの帰属が容易であることを意味する。一方で、試料表面の凹凸情報を放射光装置で検出することは困難であることが多い。電子収量の場合、共焦点光学系を構築できないことが理由の一つである。そこで本研究では飛行電子の放出角を捉えることで試料の凹凸を演算的に得ようとするものである。 2020年度は電子検出のための検出器の検討と製作を行った。検討の結果、マイクロチャンネルプレート(MCP)は電子増倍のための高電圧空間が必要なため厚みがあり、試料とゾーンプレート間の僅かな空隙に挿入することが困難であると考えた。フォトダイオード(PD)はMCPと比べてシンプルな構成であり、電子と蛍光X線の両方を検出できるメリットがある。また、センターホールのある4象限PDも存在する。そこで、回折次数制限アパーチャー(OSA)を組み込んだ4象限PDを作製した。 また、試料バイアスと外部磁場が存在する環境で、運動エネルギーを持った電子がどのような軌跡を描くのかをシミュレーションした。その結果、試料バイアスの増減によって、放出する電子線の放出角を制御できることが分かった。一方で、外部磁場については0.01テスラ以下の弱い磁場であっても、磁力線にまとわりつくような軌跡を常に描くことが分かった。これは軟X線の低運動エネルギー電子では磁場方向に強く束縛され、電子放出角の検出ができないことを示唆している。2021年度以降は放射光実験によって、これらのシミュレーション結果を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4象限フォトダイオードの製作と飛行電子のシミュレーションは完了した。 放射光を用いた試料計測は、2020年度のビームタイムが縮小されたため実施できなった。 2021年前期のSPring-8の一般課題に申請し、これが採択されたため、次年度早期に実施する予定である。よって、当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は放射光実験を実施し、電子検出効率がシミュレーション予測と整合するか検証する。2022年度、2023年度はNd-Fe-B焼結磁石を用いて3次元像の構築を行う。焼結磁石の破断面は直径数μmの結晶粒によって、凹凸が形成されている。結晶粒径の異なる試料を用いて、試料電流と4象限PDの各エレメント電流を同時に計測する。PDの暗電流補正を施したのち、演算によって表面の3次元形状の導出を試みる。別途、オフラインの共焦点顕微鏡から得られた3次元形状と比較することで、高さ情報の更正をするとともに、課題の抽出と共焦点顕微鏡と比べた優位性について検証する。
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Causes of Carryover |
センターホール付きMCDアセンブリはマイクロチャンネルプレート型からフォトダイオード型に変更したため、アセンブリの設計を再検討することとなり、次年度の購入に変更した。また、データ解析用計算機は研究の進捗状況から次年度に整備する。これに伴い、データストレージなどの周辺機器についても次年度購入に変更する。
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