2021 Fiscal Year Research-status Report
大強度中性子環境下で安定動作するホウ素被覆型中性子検出器nTGCの開発
Project/Area Number |
20K12503
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
大下 英敏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 技師 (00625163)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホウ素被覆型中性子検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、十分な放射線耐性を有しているThin Gap Chamber(TGC)をホウ素被覆型中性子検出器nTGCに改造することを目標としている。研究初年度は、TGCの小型プロトタイプの作成および読み出し回路(フロントエンド回路から計算機にデータを転送するエンコーダモジュールの作成まで)の整備がおこなわれている。TGCはガスフロー型のMulti Wire Proportional Chamberの1つであり、2枚の陰極平面で多数の陽極ワイヤーを挟み込んだ構造をしている。大きな特徴として、陰極面に1 MΩ/□の面抵抗値を持つカーボン塗料が塗布されている。nTGCにおいて中性子検出をおこなうため、カーボン面の代わりに中性子に感度を持つボロンカーバイド面を塗布する必要があり、この成膜作業が本研究における未知の作業プロセスである。ボロンカーバイド面の成膜は研究初年度から実施されているが、塗料の入手性に加えて再現性が悪いなど、塗料の調合方法から見直しを進めている。2021年度は新しい塗料として、カーボン塗料にボロンカーバイド粉末(粒径<10 μm)を添加した塗料を用意した。塗布された直後に、熱風で乾燥させ、塗装面を拭き上げることで膜厚と面抵抗値の調整を実施している。ホウ素被覆型中性子検出器において、最も高い熱中性子感度は3 μm程度の膜厚で得られ、その値は約5%である。新しい塗料に含まれるボロンカーバイド粉末の粒径は最適値に対して大きく、それに伴い成膜された膜厚も10 μm~20 μmであった。ボロンカーバイド面の成膜については、研究最終年度も引き続き改良を実施する。 小型TGCおよび中性子実験に対応した読み出し回路の整備は比較的順調に進んでおり、実際の中性子実験に向けた準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において、重要な開発項目であるボロンカーバイド面の成膜作業が少し遅れている。現在は、実績のある塗料にボロンカーバイド粉末を添加して新しい塗料を作成しているが、作業後の膜厚が厚くなる傾向がある他、面抵抗値も低くなる。ボロンカーバイド粉末と溶媒であるトルエン、酢酸ブチルを直接混合するなど、研究最終年度に改めて、塗料の調合方法の見直しを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定であるが、ボロンカーバイド面の成膜方法の開発に時間を要するため、小型TGCを用いた中性子実験の実施を先行させる。窒素ガスはn(14^N,p)14^C反応によって中性子の検出を可能にするため、チェンバーガスに窒素を混合した小型TGCの評価をおこなう。この後、ボロンカーバイド面の作成を待って、nTGCに対する中性子実験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置の影響により予定していた出張が実施できなかったため、予算を研究最終年度に繰り越した。
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