2020 Fiscal Year Research-status Report
IoTを活用した装着型フレイル予防運動支援ツールのデザインと評価
Project/Area Number |
20K12510
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
都甲 康至 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (90437765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 良一 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20253544)
岸本 裕歩 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (00596827)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フレイル予防 / 体動センサ / 呼吸 / IoT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、団塊の世代の2025年問題に対して、フレイル予防研究の重要性が増していることから、IoTを活用した装着型フレイル予防運動支援ツールをデザインし、その評価を行うことを目的としたもので、2021年度(令和3年度)では、ツールの実証実験用プロトタイプ(以下、試作品)の制作と、腹式呼吸発声運動・習得プログラムの制作(要件定義)を行う計画であった。 本年度は試作品の制作を中心に行い、研究協力会社(住友理工)が開発した睡眠状態を計測するための敷設タイプのシート状の体動センサの応用して、それに身体の腹部に装着できるような簡易ベルトをマジックテープを付けて改造・制作した。なお試作品のため、計測データは有線で専用アプリをインストールしたパソコンに転送し、試作品の電源はパソコンからUSBを介して有線で提供した。 その試作品について、研究室の学生を対象にした動作検証段階で次のような問題が明らかになった。研究協力会社から提供された既存の体動センサ用アプリでは、心拍数と呼吸数を計測することはできるが、本研究で必要となる被験者が腹式呼吸によって腹式発声を行なっているか否かといった呼吸の深度を計測することが現状ではできないことと、試作品は被験者の腹部の状況(体型、腹囲等)によっては、安定した装着が困難な場合があることが明らかになった。 そのため、腹部に装着し腹式呼吸の状態を計測する試作品を開発するためには、腹式呼吸の状態を計測するアプリを新たに開発することと、被験者の腹部の状況を考慮して誰でも装着できる装着用ベルトをデザインする必要があることが分かった。また、試作品の実用化のためには体動センサでの計測データをWifiなどの無線で転送する仕組みの開発と、体動センサへの電源供給はベルトに装着可能な電池方式を採用することを留意する必要があるという知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、高齢者のフレイル予防研究の重要性が増していることから、IoTを活用した装着型フレイル予防運動支援ツールの実証実験用プロトタイプ(以下、試作品)の制作と、腹式呼吸発声運動・習得プログラム(以下、プログラム)の制作を通じて、試作品の有効性評価を行う計画であった。 しかしながら、実証実験を行うために必要な試作品を完成するためには新たに腹式呼吸を計測するためアプリを開発しなければならない問題(継続する場合、想定外コストと開発期間が必要)と、腹式呼吸発声運動・習得プログラムの制作については、計画当初、腹式呼吸発声運動は歌を唄うカラオケによる運動のことを想定したが、2020年から続いている新型コロナウィルスの感染防止策のためカラオケに関連する多くのサークル活動や文化教室などが自由に行えない状況(カラオケに対する社会的忌避状況等含む)が1年以上も続いており、プログラム制作の研究協力者の確保が実質的に困難な状況が続いている問題などから、現在までの進捗状況としては、残念ながら遅れていると判断をせざるをえないことから、研究計画の見直しが必要と考えた。 そこで、今年度以降の研究方針として、当初計画の研究テーマであったフレイル予防運動としての腹式呼吸発声運動については、カラオケを題材にした腹式呼吸発声運動から、「正しい呼吸法を習得する運動(以下、正呼吸習得運動)」に変更し、ヨガや太極拳などの呼吸法について調査し、正呼吸習得運動・習得プログラムの現状と新規制作の可能性について調査・検討する。また、正呼吸習得運動の習得状況を計測するためのツールについては、昨年度制作した試作品の改良可能性の検討、及び他の既存の装着型ツールについて現状調査を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の趣旨は、フレイル予防と健康の維持増進を図ることが既に評価されている正しい呼吸法を習得するための運動プログラム(以下、正呼吸習得運動プログラム)について、その運動プログラムを教示する指導者や運動を学ぶ高齢者に対して、プログラムで学んだ呼吸法の習得状況を客観的数値として提供し、運動の改善を促すことができるようなツール(IoTを活用した装着型フレイル予防運動支援ツール)をデザインし、評価することであるが、この趣旨については今後も踏襲するものとする。 ただし、昨年度の進捗状況と課題を踏まえ、本研究課題の今後の推進方策について、今年度は、正呼吸習得運動プログラムについては、計画当初のカラオケを題材にしたプログラムから、ヨガや太極拳などを題材にしたプログラムに変更し、高齢者を対象としたツールの実証実験にそのまま採用可能な正呼吸習得運動プログラムを調査し評価する。新たなプログラム制作の必要性については、その評価時点で改めて判断する。 また、正呼吸習得運動プログラムに基づいて運動する高齢者の正しい呼吸法か否かの状況を計測するためのツール(IoTを活用した装着型フレイル予防運動支援ツール)については、昨年度制作した試作品の改良可能性の調査・検討と、実証実験に採用可能な他の既存ツールについて調査・評価の、二つの方向で検討を行い、今年度中に実証実験が可能な状態を整える。 加えて、公民館などの公共施設で複数の被験者(高齢者)を対象に同時に実施する正呼吸習得運動プログラムを用いたツールの実証実験については、現在の新型コロナウィルスの感染状況を踏まえ、研究の最終年度に実施することとし、実験の時期については今年度末に改めて判断する。なお、実証実験の調査計画については今年度中に取りまとめ最終年度で実施できるように準備する。
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Causes of Carryover |
研究計画の見直しにより、計画当初のカラオケを題材にした正呼吸習得運動プログラムから、ヨガや太極拳などを題材にしたプログラムに変更し、高齢者を対象としたツールの実証実験にそのまま採用可能な正呼吸習得運動プログラムについて追加調査が必要になったことから、その費用(短期雇用者等人件費)に次年度使用額の一部(約30万円)を充当する。 また、正呼吸習得運動プログラムに基づいて運動する高齢者の正しい呼吸法か否かの状況を計測するためのツール(IoTを活用した装着型フレイル予防運動支援ツール)については、昨年度制作した試作品の改良可能性の調査・検討と、実証実験に採用可能な他の既存ツールについて調査・評価の、二つの方向で検討を行うことが必要になったためそれらの追加経費に、次年度使用額の一部(約70万円)と今年度の助成金(アプリ開発費と短期雇用者等人件費など)を充当する。なお、学会発表に伴う参加費や旅費、及び実証実験の調査計画に必要な経費(短期雇用者等人件費)ついては今年度の助成金から充当する。
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