2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on charting method of Japanese historical space understanding by the act of viewing while walking
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20K12527
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
清水 和洋 (清水泰博) 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (80345339)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視点場と視対象 / 閉鎖と開放 / 明暗 / 回遊 / シークエンス / ナラティブ / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はコロナ(COVID19)の鎮静期(9月)に京都での現地調査を行った。主に「視点場と視対象」の調査であり、周回移動の回遊式庭園は桂離宮庭園、修学院離宮庭園、等持院庭園を、往復移動の神社境内空間については上賀茂神社、下鴨神社、大田神社、木嶋神社を、ここでは空間内における結界の場所も確認した。点在間移動の寺院空間では永観堂、大徳寺大仙院にて行った。それ以外の調査としては横浜の三渓園庭園、称名寺庭園の調査を行い、また東京の六義園庭園、根津神社はコロナ禍であっても比較的容易に調査の可能な身近な場所として複数回の調査を継続的に行っている。 その六義園での数度の調査において、歩行回遊体験に影響を与える「空間構成要素」として、1. 閉鎖感、開放感を生み出すものとしての「植栽、土地の起伏」、2. 距離感を生み出す「池と大地、島」、3. 空間のまとまりを生み出すものとしての「各場所の明暗」が想定できた。それらは景観を形成している要素ではあるが、特に視覚による空間イメージ形成に及ぼす影響が強いと思われるポイントだからである。それを平面図に落とし込むことによって、庭園環境を示す別の様式の図の作成が可能になるのではと思っている。またもう一つの着目ポイントは庭園における順路についてで、順路が視点場と建築物などの視対象との関係にどのように影響しているかを考察した。これはナラティブの観点から庭園の物語性に順路の方向性が影響しているのか、それとも逆順路であっても別の解釈の可能性があるのかを今後の調査で確認したいと思っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定の京都を中心とする調査が、COVID19流行の為に予定通りに進められていない。また同様に比較調査対象として行う予定であったイギリスの風景式庭園の調査も実現出来ていない状況である。そういった状況の中、比較的コロナ感染の落ち着いた時期の9月には京都での実地調査を行うことが出来た。ただその後はまた緊急事態宣言が繰り返し出される状況となり、寺院等の調査対象地も見学が出来ない状況となり、思うように調査が進んでいない。また大学からも遠隔地への出張は自粛するように指示されている状況である。 そのような事情から、昨年度の基礎調査は東京及び近郊の場所に切り替えて行っている。六義園庭園は江戸期の回遊式大名庭園であり、関東における回遊式庭園の代表的な場所でもある。大名庭園故に少し回遊路は広めであるが、回遊における視点場と視対象の関係を調査することは可能であり、現在のCOVID19流行において、緊急事態宣言以外の時期には、ここでの調査を既に複数回継続的に行ってきた。これは京都の回遊式庭園の代替としての調査であるが、事前調査的な意味合いもあって、ここで得られた仮説を本調査地・京都で行うことが今は効率的であるという判断でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID19の流行状況次第ではあるが、可能であれば夏以降に京都及び地方での調査を集約的に行うことを考えている。それまでは東京及び近郊での代替調査を継続的に行い、そこで得られた知見を京都での調査に活かす方向である。ただ今後の京都での調査再開の折の懸念事項としては、この感染拡大の中で拝観自体を長期的に取りやめている場所もあって、そこでの調査の仕方を改めて考える必要性を感じている(大徳寺高桐院は昨年9月時点も拝観出来なかった)。 今は夏までの現地調査の出来ない間は昨年の京都調査結果データをもとに、より詳細な分析を様々な観点から行い、それらをいくつかの視点で分類した上で、各要素を図面等に落とし込んだ仮説のロケーションマップを作成する予定である。 また今後の調査にあたっては、まだ自由に京都及び地方の調査を行えるか分からない為、当初予定していた3つの空間移動(周回移動、往復移動、点在間移動)毎の調査は、空間毎ではなく、3つを同時並行にて進めていく予定である。比較研究対象のイギリス風景式庭園調査については、日本の空間特性、独自性を知る為にもこの比較検討の必要性をより感じてきているため、満を持して3年目に延期して行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は2020年度のCOVID19(新型コロナウイル感染症)の流行で、予定していた海外調査(イギリス風景式庭園調査)が出来なかったことである。また同様に国内調査の頻度も少なくせざるを得なかったことも旅費部分の使用額減になっている。その影響で調査に向けての使用機材の購入を必要最小限にし、いくつかを次年度以降に変更したことは物品費減に繋がっている。次年度(2021年度)についても現在のCOVID19の感染状況を見る限りでは、まだイギリスの庭園調査は難しいと考え2022年に延期するつもりである。それらのスケジュール変更を鑑みて、国内調査はより早く進める方向で考えており、イギリス調査については文献調査などを先行し、実地での調査時の効果が大きくなるように考えている。
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