LED転換期における屋外照明の照度・色温度・輝度・演色性と空間イメージの比較研究

2023 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K12541
• Research Institution: Kobe Design University
• Principal Investigator: 相澤 孝司 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (20212342)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 曽和 具之 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (00341016) ; 安森 弘昌 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (20341018)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: 屋外照明 / ＬＥＤ / ＳＤ法 / 心理的評価 / 空間イメージ

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、屋外照明のLED転換期における「照明デザイン」の重要な要因として「演色性」（視対象の色の見え方に及ぼす光源の性質）に着目したものである。従来の既設光源（蛍光水銀灯・高圧ナトリウム灯など）をLED光源に置き換えると飛躍的に「演色性」が改善する。「演色性」の改善は、屋外照明の物理的要因及び心理的要因を総合的にプラス側に引き上げ、空間イメージにも大きな影響があると考えられる。本研究グループは、先行研究として（LED以前の光源による）、神戸市三宮周辺地区の北野町、三宮駅北側、旧居留地、南京町、メリケンパークにおける照度・色温度・輝度を計測し、解析した。さらに被験者によるSD法を用いた心理的評価の実験を試みた。研究の結果、照明空間の物理的要因と心理的要因が密接に関与していることが分かった。2021年度は、本研究の調査対象となる神戸市三宮地区における屋外照明空間の再調査及び再選定を完了することができた。すなわち、各調査地区の物理量（照度・色温度・輝度・演色性）の測定を終了し、解析をおこなった。したがって、先行研究における2003年のデータと比較することが可能となった。現時点での比較検討結果から、特徴ある物理量の傾向が確認された。さらに、再調査を行った各地区ではLEDに転換された夜間景観の写真撮影を行った。撮影した写真データは、SD法の実験に提示する画像試料となる。したがって、心理的評価実験が可能となり、SD法の予備実験を試みた。物理量と同様に実験結果から2003年のデータと比較できた。物理量の傾向及びSD法の実験については、後述の現在までの進捗で詳細を述べている。SD法の本実験については、本研究の重要な事項であり、研究分担者及び研究協力者と慎重に検討する計画である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

照明空間の再調査では、神戸市三宮地区の5ヶ所（北野町・三宮駅北側・旧居留地・南京町・メリケンパーク）の調査を完了した。各調査地区の物理量（照度・色温度・輝度・演色性）の地区ごとの平均値が明らかとなり、先行研究の調査データとの比較が可能となった。照度：全ての地区において照度（水平面及び鉛直面）が上昇している。色温度：北野町は、2883Kから4770Kに上昇し、メリケンパークは、4743K から2900Kに低下する逆転の傾向が現れた。輝度：三宮駅北側のみが上昇傾向となり、北野町では、ほぼ同様、その他地区は低下傾向を示した。特に南京町では、約48％の低下となった。演色性：南京町（Ra60.4)以外の全ての地区でRa80前後を示し、測定値からもLEDに転換されていると推測できる。写真撮影：神戸市三宮地区における再調査により再選定した、北野町4カ所、三宮駅北側5カ所、旧居留地7カ所、　南京町3カ所、メリケンパーク3カ所の以上23カ所の夜間景観の写真撮影を完了した。調査地区の照度・色温度・輝度・演色性を再測定し、2022年と2023年を比較した。照度に関しては、ほぼ同様の数値となった。
SD法の実験：各地区の夜間景観の画像試料を用いて、SD法による心理評価の実験を行った。メリケンパーク地区は、ポートタワーの改修工事の為、4地区を対象に予備実験を開始した。暗室空間において、LEDモニター70インチにより画像試料を提示して実験を行った。SD法の被験者は、男女13名（20歳から22歳）に評価シートに回答させた。集計した実験結果から、各地区のプロフィールの作成を行った。2003年のプロフィールと比較すると形容詞対のグラフの左右の振れ幅が大きくなっており、全体的に分散した傾向を示した。現在、各地区の因子分析の解析中であり、SD法の本実験までには因子構造を明らかにして考察する予定である。

Strategy for Future Research Activity

メリケンパーク地区の再撮影及び再測定
2024年4月末にリニュアルオープンしたポートタワーを含めた再撮影を行い、並行して同地区の照度・色温度・輝度・演色性の再測定を行う。調査地区の輝度測定については、逐点計測として、色彩輝度計を用いて夜間景観の特徴が現れている部分を5カ所から10カ所選定し輝度を測定する。測定されたデータは、パソコンにより専用ソフトを用いて解析する。輝度分布イメージ画像につては、（株）ビジュアルテクノロジー研究所（以下VTL）中村芳樹先生の助言をもとに逐点法の測定データと比較しながら、考察の参考資料とする予定である。以上の物理量の測定は、2021から2024年度の時系列データとして追跡的に調査する。
SD法の実験：再調査を行った各地区の夜間景観の画像試料を用いて、SD法による心理評価の実験を行う。実験では、大学内の暗室空間において、LED モニター70インチ型に画像試料を提示し、空間イメージの実験を開始する。SD法の被験者は、健康で正常な視力を有する男女約40名に先行研究で用いた評価シートに回答させる。集計した実験結果から、各地区のプロフィールの作成を行い、並行して因子分析による各地区の因子構造を明らかにする。したがって、2003年のSD法による心理的要因のデータとの比較検討を行い、空間イメージについて考察する。したがって、LED光源の転換による屋外照明の「照度・色温度・輝度・演色性」が、空間イメージに対してどのように影響しているかが明らかになる。一連の研究を総合的に考察した結果、LEDの特性を活かした「照明デザイン」の定量的な評価が可能となり、都市における夜間の安全性と快適性を勘案した効率的なLEDの新たな「照明デザイン」の指針となる。研究成果は、省エネルギーを推進し、地球環境への負荷低減に大きく寄与するなど、SDGsの目標達成となる。

Causes of Carryover

本研究の調査地区は、新型コロナ禍の影響による、緊急事態宣言下の地区であり、十分な照明空間の再調査を行う事が出来なかった。したがって、最終年度に向けて調査補助費を重点的に配分し、SD法の実験及び各地区の物理量の再調査を行う予定である。また、VTL中村芳樹先先生及び九州大学大井尚行教授も含めて、SD法の実験準備を万全に行うために研究分担者と訪問するなど、本研究に関する情報を共有し、盤石な研究体制を整える。さらに、SD法の予備実験を参考にして、本学及び近隣施設の実験環境を検討しながら、予備実験において画像試料の提示に有効であった、LED70インチ型モニター及び輝度分布画像用のカメラの購入を予定している。