2020 Fiscal Year Research-status Report
A study of the differences of sensitivity and creativity between humans and machines from the perspective of Neocybernetics
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20K12553
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Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
大井 奈美 山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (50635026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 茂生 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 准教授 (00453449)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情報と創造性 / 感性 / 生命情報 / 社会情報学 / ネオ・サイバネティクス / 自律性 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究成果の具体的な内容は次の通りである。すなわち、(1)「情報と創造性」を主題とする連続研究会を実施(4回)、(2)社会情報学会(SSI)学会大会・プレカンファレンスの開催(9月4日)である。論文ではないため業績一覧には掲載しないが、現代情報社会をめぐる学術的WEBマガジン『RAD-IT21』への寄稿(4件)も付記する。 研究成果の意義は、次の2点を挙げられると考えている。第一に、本研究の問いに対して、理論面での考察を深めるとともに事例面の拡充も進められた点である。ここで言う本研究の問いは、「創造性や感性の上で、人工知能(AI)に代表される機械と人間との異同はどのようなものか」である。具体的に言えば、理論面では歴史的および哲学的観点からみた創造性の再考、事例面では感性に関するAIや文学等の考察を行った。 第二に、2020年度に行った様々な考察において、新しい情報観によって創造性や感性を捉え直した点である。すなわち、機械によって処理される信号やデータとしてだけでなく、生命の発露(生命にとっての意味や価値)としても情報を理解するような情報観である。 研究成果の重要性としては、創造性や感性に注目するアプローチによって、生命尊重を根拠とする現代情報社会の望ましいあり方への寄与を期待できる点が挙げられる。新たな情報観にもとづく創造性や感性の再評価によって、生命中心に情報社会のあり方を根本的に再理解するための一歩をふみだすことができたのではないかと考えている。この点は、機械を人間や生物の管理のためではなく、生物としての人間の自律的な創造性を活性化するために利用する条件を整えるという、社会情報学的課題への寄与を目指す本研究の目的に適うものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の研究実施計画に照らして、おおむね計画通りに研究を実施できたものと考えている。研究実績の概要に即して、その理由を説明する。なお、以下の成果は研究チームによる隔月開催の定期的な研究検討会をつうじて実現された。 まず、社会情報学会(SSI)大会において、社会情報学と芸術を主題にしたプレカンファレンスを計画通りに開催できた(タイトル「テクノロジーと人間との創造性:その異同ならびに連動する作用」、2020.9.4)。研究代表者を含めて3件の研究発表が行われた。また、コメンテーターとして大阪成蹊大学および京都芸術大学の2名の研究者が有益なコメントを提供してくれた。当初は京都で実施予定だったが、コロナウイルスの感染拡大状況に鑑みて、オンライン会議の形をとることになった。そのことも幸いしたのか多くの参加者に恵まれた。 つぎに、「情報と創作」と題した連続研究会(講演会)を4回実施できた。これはネオサイバネティクス研究会と情報システム学会基礎情報学研究会との共催で行ったものである。オンライン会議の形態で広く一般にも公開して開催したことから、様々な専門分野および実践現場における方々の参加を得て、充実した議論を行うことができたと考えている。 なお、論文ではないため業績一覧には掲載しないが、現代情報社会をめぐる学術的WEBマガジン『RAD-IT21』へ寄稿したことも付記する。研究代表者・分担者・協力者あわせて4件の文章である。連続研究会とも連続しつつ、さらに具体的な事例研究を展開するような内容となり、広く一般に研究成果の一部を還元する機会になった。 当初参加を予定していた国際会議IGEL(国際経験的文学・メディア学会)については、コロナウイルス感染拡大の影響で開催が延期されたため、参加を見送った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、研究チームによる隔月開催の定期的な研究検討会を継続している。そして、「情報と創作」と題した連続研究会(講演会)をさらに複数回開催する予定である。 2021年度の研究計画を実行する上での課題については、コロナウイルス感染症の拡大によって、海外での実地調査や合同研究会の開催の形態および時期に、合理的な変更や調整の必要が見込まれる。第一に、事例の一つとしてのメディア・アート作品および作家の実地調査(「アルス・エレクトロニカ」と「トランスメディアーレ」)についてである。9月8日から12日まで開催される「アルスエレクトロニカ・フェスティバル2021」は、従来のように拠点であるオーストリアのリンツだけでなく世界120ヶ所で、展覧会・コンサート・会議などのハイブリッドで行われることになった。そのため、フェスティバルの詳細を調査したうえで、適切な参加場所と形態を選択する必要がある。フェスティバルの主題は「New Digital Deal」に決まり、本研究課題にとって刺激的な機会になることが期待される。一年間かけて展示・上映・トークイベントなどがオンラインと実地の双方で行われている「トランスメディアーレ」についても、同様の対処が必要となる。 第二に、国際的な合同研究発表会の実施(ニューヨーク大、マギル大等)についても、開催時期・形態を再検討する必要がある。延期となった国際会議(IGEL)の代替として、9月開催予定のIS4SI(国際情報学会)における「Theoretical and Foundational Problems (TFP) in Information Studies(情報学における理論的・基礎的問題)」と題する会議も、本研究課題の参考になる可能性がある。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の感染拡大状況に即した研究実施計画の調整によるところが大きい。具体的には、連続研究会「情報と創造性」の開始時期が10月にずれこみ謝金の合計額が減額されたことや、各種学会および研究会(社会情報学会、ネオ・サイバネティクス研究会、連続研究会)の開催形態がオンラインになったことで旅費(宿泊費・交通費等)の必要がなくなったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 今後は、2020年度に開催しきれなかった分も含めて連続研究会「情報と創造性」を引き続き開催するとともに、コロナウイルス感染症の影響で延期された国際学会およびメデイア・アート系の実地調査等に、適切に助成金を使用する計画である。
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Remarks |
ウェブサイト「digital-narcis.org」はネオ・サイバネティクス研究をめぐるものである。
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Research Products
(10 results)