2021 Fiscal Year Research-status Report
A study of the differences of sensitivity and creativity between humans and machines from the perspective of Neocybernetics
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20K12553
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Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
大井 奈美 山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (50635026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 茂生 青山学院女子短期大学, コミュニティ人間科学部, 准教授 (00453449)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情報と創造性 / 感性 / 生命情報 / 社会情報学 / ネオ・サイバネティクス / 自律性 / 人工知能 / オートポイエーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生命と機械をシステム論的に峻別するネオ・サイバネティクスやオートポイエーシス論の知見を手がかりに、機械と人間の感性および創造性の異同について検討することで、人工知能のような高度に知的な機械がますます身近になるであろう未来社会のあるべき価値観の構築に資することを目的としている。 本年度は、研究チームによる定期的な研究検討会のほかに、前年度から継続中の「情報と創造性」を主題とする連続公開研究会を5回実施することができた。また、西洋哲学史に依拠しつつ、21世紀のテクノロジーの思想をあらためて世に問うたことで世界的に注目されているユク・ホイ氏の書の翻訳にも携わることができた。その他、次年度以降に刊行が予定されている複数の書籍の執筆や、一般市民や産業界に向けた講演活動、ならびに小説の創作過程に関わるメディア・アートの試作も行うことができた。 本年度の研究の意義は、第一に、機械と人間の感性および創造性の違いを、哲学的およびシステム論的に明確化することができた点にある。これは高度に知的な機械が台頭しつつある現代において極めて大きな意味を持つ。機械による芸術創作などが耳目を集めているが、その創造のプロセスや創造性が発揮されるメカニズムという点において、機械と人間はまったく異なる存在であることが理論的に明確になった。 第二に、こうした知見に基づいて、実際の人間の創作活動のプロセスの分析や、現代の情報教育や経済活動のあり方の再考を進めることで、近未来社会に望まれる新しい価値観の醸成に向けて一定の道筋を得ることができた。各種の講演活動やメディア・アート作品も、一般への訴求、還元という点で意義深いものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で当初予定していた海外での発表や調査はまだ実施できていないが、国内の学会における研究発表の実施や、「情報と創造性」をめぐる連続公開研究会の開催、および研究チームによる詳細な成果検討会については定期的に開催することができている。これらの成果としての書籍や論文、作品の公開は次年度以降に持ち越されたものが少なくないものの、執筆に関してはすでに手を離れているものもあり、作品の試作も順調に進んでいることから、全体として着実に研究を進められていると考えている。 なお、研究代表者が編集した図書ではないため業績一覧には掲載しないが、研究代表者(大井奈美)および研究協力者(西田洋平)が竹之内禎編著『生きる意味の情報学――共創・共感・共苦のメディア』(東海大学出版部、2022年)へ寄稿したことも付記する。あわせて3件の文章である。この図書は、機械にはなく人間に固有の生きる意味について、ネオ・サイバネティクス情報学の観点から捉えたものである。したがって、当該図書の主題は、人間固有の感性や創造性の実現について考察する本研究課題の主題と軌を一にする部分がある。寄稿した文章は、具体的な事例をもとに、研究成果の一部を還元する機会になった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も「情報と創造性」と題する連続公開研究会の開催と、研究チームによる詳細な成果検討会は継続実施する予定である。海外での実地調査や研究発表については依然として調整中だが、海外研究者との交流は継続的に行っており、試作中のメディア・アート作品やこれまでの研究成果である論考を海外に向けて発信すべく動いていく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の感染拡大状況に即した研究実施計画の種々の調整による。具体的には、コロナウイルスの感染再拡大の影響で延期になった海外での学会参加や実地調査の旅費(宿泊費・交通費等)が、次年度使用が生じた主な理由である。 また今後は、連続公開研究会「情報と創造性」を引き続き開催するとともに、コロナ禍に即した遠隔・対面のハイブリッド型の研究環境整備にも適切に助成金を使用する計画である。具体的には、遠隔会議のための情報機器の整備や、徐々に再開している対面での研究会への参加旅費等である。さらに、今後コロナウイルスをめぐる状況が許せば、国際学会およびメディア・アート系の海外での実地調査等についても、参加する必要のあるものを再検討した上で、適切に助成金を使用する計画である。
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Research Products
(7 results)