2022 Fiscal Year Research-status Report
"Practice and knowledge" of the support team in research data management
Project/Area Number |
20K12558
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
國本 千裕 千葉大学, アカデミック・リンク・センター, 准教授 (10599129)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 研究データ管理 / オープンサイエンス / RDM / 支援人材 / 専門職 / 実践知 / 知識活用 / データマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、COVID19による渡航制限の影響を受けて2年間延期していた、国外でのフィールドワークに着手した。令和3年度に再修正した、新しい研究計画にもとづき、研究データ管理支援の先進事例として知られている、米国イリノイ大学アーバナシャンペーン校の「研究データサービス部門(Research Data Service、以下RDS)」において、約2週間の訪問調査を実施した。 訪問調査の目的は、研究データ管理支援を成立させる組織(組織構造と人材配置)、サービスの運用実態(役割分担と課題解決や意思決定のプロセス)、支援人材に必要な知識とスキル、以上の3点を明らかにすることである。これらを明らかにするため、①組織概要およびサービス概要についての文献調査、②サービス現場での参与観察(研究者へのコンサルテーションやワークショップ等への参加)、③スタッフ・ミーティングでの参与観察、④支援人材への個別インタビューを実施した。 ①の文献調査と②の参与観察の結果から、大規模総合大学において、最小のリソースで研究データ管理支援を運営するための工夫(RDSをコアに構築された全学の研究支援組織との連携・協力体制、多様な専門職区分、リエゾン・ライブラリアンとの役割分担、院生スタッフの活用等)が明らかとなった。 さらに、③スタッフ・ミーティングへの参与観察、④担当者への個別インタビューの結果から、支援サービスを円滑に運用するために必要な要素(機能を重視したスタッフ配置、迅速な意思決定、柔軟な役割分担、多様な連携パスをいかした積極的なアウリーチなど)も明らかとなった。令和2年度・3年度に実施済みの、文献調査より抽出した「研究データ管理支援人材に必要な知識・スキル」の活用実態や、支援人材に必要な「姿勢や意識」等についても明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体計画の【STEP1】文献調査は完了し、論文投稿の準備中である。【STEP2】海外の先進大学における訪問調査(フィールドワーク)は海外渡航制限の影響を受けて2年間実施できなかったことから、進捗状況は「(3)やや遅れている」とした。 従来の研究計画では、令和2年度に、アジア圏の大学(シンガポール等)において、サービス現場に長期密着したフィールドワークを実施予定であった。また、令和3年度に、オセアニア圏(オーストラリア等)を対象とした、短期の訪問調査とインタビューを実施予定であった。しかしながら、渡航制限によりどちらも実施を延期した。 この状況を受けて、令和4年度は研究計画を変更し、渡航制限の緩和直後に、速やかに渡航可能かつフィールドワークの許可が下りた米国を調査対象として追加し、イリノイ大学アーバナシャンペーン校において【STEP2】の長期訪問調査を実施した。さらに【STEP3】の候補として、新たに米国ミシガン大学の研究データ管理部門を加え、プレ・インタビュー調査を実施済みである。令和5年度以降は、渡航制限が緩和されたため、アジア・オセアニア圏での訪問調査を再開できる見込みである。これらをふまえて、本研究の研究期間については、1年間の延長を申請した。 研究成果の報告については、実質的な調査の遅れと海外渡航制限により、当初計画していた国際学会への実地参加は叶わなかった。代わりに、急遽オンライン開催かつ参加可能な国際会議(査読付)に別途応募し、本研究の経過を報告済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度前期については、従来の調査対象であった、アジア・オセアニア圏における研究データ管理サービスの先進大学において、短期の訪問調査(【STEP3】に相当)を実施する。組織や人員体制など、この数年で変更が生じた組織もあることから、候補については再度検討のうえ、実施許可・実施時期等を訪問先と再調整し、速やかな実施を試みる。【STEP3】については、令和4年度末に、インタビュー調査を実施できたミシガン大学の研究データ管理部門の調査結果も加えて、さらなる分析を行う。 令和5年度中期には、上記と同時並行して【STEP1】【STEP2】【STEP3】の結果をまとめた総合分析を行う。本調査の目的は【STEP2】および【STEP3】で訪問した、先進大学の研究データ支援サービスの現場において、【STEP1】の文献調査で明らかとなった「知識・スキル」がどのように活用されていたか、なかでも特に重要な「知識・スキル」とはなにか、を明らかにすることである。令和5年度中期は、これまでに実施した訪問調査(米国・アジア・オセアニア)の事例調査の結果を比較し、これらを明らかにする。 令和5年度の後期には、【STEP4】、すなわち、日本国内で研究データ管理支援を開始しつつある大学の、支援組織と支援人材(もしくはその候補者)を対象とした個人インタビューを可能な限り実施する。令和3年度以降、科学技術政策の変化を受けて、日本国内でも研究データ管理のための支援組織を設置した大学や、専門人材の育成にむけた取り組み等が活発化している。計画の遅れにより、実施規模(対象や人数)を縮小せざるを得ない可能性はあるが、今後の「支援のあり方」を探るうえで重要な項目であることから、【STEP4】についても速やかに実施したい。
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Causes of Carryover |
海外渡航制限の影響で、令和2年度および令和3年度に計画していた、アジア・オセアニア圏におけるフィールドワークが延期となった。そのため、昨年度に引き続き、①海外渡航の費用、②現地における滞在費、③英語インタビュー反訳のための費用など、フィールドワーク関連の諸経費について、大半を繰り越すこととなった。加えて、令和3年度および4年度に現地参加を計画していた国際会議について、こちらも渡航制限の影響でオンライン参加に切り替えた。そのため、①海外渡航の費用、②現地における滞在費等を繰り越している。 令和5年度については、海外渡航制限も緩和されたため、延期してきたアジア・オセアニア圏におけるフィールドワークを実施し、その必要経費を最優先で使用したい。研究成果公開に関わる経費(国際会議への参加費等)については、その残額を使用する。
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