2023 Fiscal Year Research-status Report
記憶や知識が色知覚に与える影響の認知メカニズム的解明
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20K12571
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
福田 玄明 一橋大学, ソーシャル・データサイエンス研究科, 准教授 (40615100)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 記憶色 / 認知科学 / 認知神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶色と呼ばれる、色の知覚に我々の知識や記憶が影響する現象が知られている。例えば、リンゴの画像がより赤っぽく感じられるというように、知覚される色が、既知の対象の典型的な色の方向にずれて感じられる現象である。記憶色は古くから知られる効果であるが、そのメカニズムには議論があり、大きく分けて、(1)本当に典型的な色が対象から知覚されている可能性と、(2)事前の知識が反応自体(言語化など)をバイアスしている可能性という2つの仮説が議論されている。 我々はこれまでに、この記憶色との関連が想定される、新しい錯視現象を発見した。この新しい錯覚現象を用いて、記憶や知識が色の知覚に影響を与えるメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。これにより、記憶や知識にかかわる高次の認知過程がより低次の知覚情報処理に与える影響の仕組みを調べられることが期待できる。 2023年度は、本実験を行い、予備実験で予想されていた通りの結果を得ることができた。これにより、実際に錯覚現象が起こっていること、記憶や知識により知覚される色が影響を受けることが示唆されている。 この結果を受けて、今後は、論文の執筆を行い、MRIを用いた脳機能計測実験を行う予定である。 なお、電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループシンポジウム、および、日本人工知能学会にて関連研究についての発表を行い、論文化のための有益な意見を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度、実験を行い予定通りの結果を得ることができた。しかしながら、論文の執筆、および、発表にはまだ至っておらず、やや遅れている。2024度、積極的に発表活動を行うことで後れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、論文執筆の準備を行いつつ、脳機能計測実験の準備を同時進行で進めている。一橋大学に脳科学センターが設置され、最新のMRIが導入され、これを利用する環境はすでに整っており、今年度中に実験を行うことが可能である。脳機能計測実験では、記憶色が知覚されるための、視覚野の働きと記憶にかかわる脳部位の相互作用について調べる。DCMと呼ばれる脳の領域間の機能的結合をモデル化し、そのモデル選択によってもっともらしい機能的結合を決定する方法を用いて、記憶色にかかわる複数の認知機能を担う脳部位の関係を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
脳機能計測実験がまだ行えていないため、この被験者用謝金としての金額が残ってしまった。今年度、脳機能計測実験を行うことでこれらは使用される予定である。実験計画では、被験者1人当たり1時間半のfMRI計測実験を50人ほどの実験参加者に対して行う予定である。これにより、400000円程度の謝金を支払うことになる。
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