2021 Fiscal Year Research-status Report
無意識的な模倣が生じるメカニズムの解明-行動指標と近赤外分光法による検討-
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20K12581
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
井藤 寛志 愛知大学, 文学部, 教授 (20464141)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自動的模倣 / ミラーニューロンシステム / 同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は主に,他者が腕を使って連続的にキーを押す系列動作を観察し遂行する課題を用いて,身体運動への無意識的な模倣の心的メカニズムとその脳神経基盤を検証可能な実験課題の確立を目指した。研究の具体的な内容を以下に示す。 まず前年度に使用した観察運動課題の実施中に実際の他者の存在が与える影響について予備的実験を実施した(実験参加者数:10名)。観察運動課題とは,手指の細かな運動を用いた多くの先行研究とは異なり,腕全体を使用する連続的な動作を観察後に,視覚提示される手がかり数字によって指示された左からの順で”1”から”3”の反応キーをできるだけ早くかつ正確に押すという課題である。一致条件では,実験参加者はモデル人物の動作を模倣するようにして数字を順に押すことを求められる。これに対して不一致条件では,実験参加者は観察した動作の順序とは異なる順序で反応キーを押すことを求められる。令和2年度の研究において,無意識的に思わず観察した動作に同調してしまう自動的模倣が生じ,不一致条件の反応時間が一致条件のそれよりも遅くなることは確認している。令和3年度は,この結果がモデル人物が実際のヒトである条件下においても再現されるのか否かを検討するために予備的実験を実施した。その結果,実験参加者のサンプルサイズはまだ小さいが,モデル人物が映像として視覚提示される条件よりも強く自動的模倣の効果が現れる可能性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画書において令和3年度に実施予定であった観察遂行課題の改良とそれに伴う行動実験を予備的に実施することはできた。しかしながら,本課題中の脳活動を計測する実験の予備的な実施を行うことができなかったため,研究がやや遅れていると考えられる。理由として,計画の段階では課題中の脳活動を計測するためにfNIRS装置を購入あるいはレンタルすることを考えていたが,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い感染予防を徹底しながら対面での実験を実施する必要があり,当初予定していた環境で実験遂行が難しい状況が続いた。また,世界的な半導体不足によりfNIRS装置の調達が難しくなり,当初予定通りに実験を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、観察遂行題の改良をさらに進め、実験手法を完成させた後、運動への模倣中の脳活動を計測する実験を実施する。まずは必要最小限の参加者(20名)で予備実験を行う。その予備実験の結果に基づいて問題点の改善を行い、本実験の準備を進める。そして、令和4年度の後半には、観察遂行課題を対面で実施し、fNIRS装置の計測チャンネルを2名の頭部に分割して配置し、二者間で模倣している時の脳活動を同時計測する。これにより、単独の脳活動では知ることが難しい数人の脳の同期活動を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度では新型コロナウイルス感染症の拡大により、各学会の年次大会がほぼオンライン開催となり、出張のための旅費が当初計画予算を下回ることになった。また,fNIRSの調達も遅れが生じたため,予定していた予算を執行することができなかった。そのため,令和3年度の予算を次年度以降に繰越し,ワクチン接種の拡大により学会や研究会等の出張も可能となればそちらの旅費に充てる。また,コロナ禍の収束により装置の調達が可能になれば,そちらにも繰り越した予算を充て,fNIRS装置の使用期間を十分に確保できるようにすることを予定している。
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