2021 Fiscal Year Research-status Report
霊長類の養育行動発現に関わる認知神経メカニズムの解明:マーモセットを用いた検討
Project/Area Number |
20K12587
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
篠塚 一貴 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (50549003)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 養育行動 / コモンマーモセット / 内側視索前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日、親による子の虐待やネグレクトなどが社会的な問題となっており、適切な養育行動の発現に必要なメカニズムを理解することが重要な課題となっている。本研究では、一夫一妻で家族で子を育てる小型霊長類コモンマーモセット(Callithrix jacchus)を用いて、養育行動に関わる認知神経基盤を検討する。 マウスでは、内側視索前野に分布しているカルシトニン受容体を発現する神経細胞が養育行動に重要な役割を持つことが分かっている。マーモセットにおいても、内側視索前野にカルシトニン受容体を発現する神経細胞が分布しているため、これらの神経細胞が正常な養育行動の発現に必要である可能性がある。 今年度は、カルシトニン受容体を発現する神経細胞を薬理学的に操作して養育行動への影響を調べるため、カニューレを留置したマーモセット12個体を作出した。マーモセットは、上のきょうだいも両親と同等の養育(子の背負い行動)を示し、この行動は内側視索前野に強く依存することがわかっている。このため、本研究でも家族の維持のために上のきょうだいを被験体とした。 母親の出産後に、被験体の内側視索前野に対してカルシトニン受容体のアゴニスト(amylinもしくはsalmon calcitonin)、アンタゴニスト(AC187)、もしくはコントロールとして人工脳脊髄液(aCSF)を投与した。投与後に子の回収テストを実施し、aCSF条件と各薬剤条件を比較した。結果、amylin投与条件においては、背負い率の増加や拒絶率の低下といった養育行動の改善が示唆される結果を得た。ただし、ベースラインの養育が良い個体は天井効果のためアゴニスト条件が実施できないなどの制約があり、結論付けるためにはさらにデータを増やす必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マーモセットへのカニューレの埋め込みや薬剤投与といった手技を確立し、実験データも得られていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き内側視索前野への薬剤投与実験を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
所属研究室全体の予算状況との兼ね合いで次年度使用額が生じたが、次年度に薬剤の購入などで使用する予定である。
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[Journal Article] Calcitonin receptor signaling in the medial preoptic area enables risk-taking maternal care2021
Author(s)
Yoshihara, C., Tokita, K., Maruyama, T., Kaneko, M., Tsuneoka, Y., Fukumitsu, K., Miyazawa, E., Shinozuka, K., Huang, A.J., Nishimori, K., McHugh, T.J., Tanaka, M., Itohara, S., Touhara, K., Miyamichi, K., Kuroda, K.O.
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 35(9)
Pages: 109204
DOI
Peer Reviewed / Open Access