2021 Fiscal Year Research-status Report
Ex vivo reconstruction of hematopoietic function using 3D culture of umbilical cord blood cells
Project/Area Number |
20K12592
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三好 浩稔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70292547)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / ストローマ細胞 / 三次元培養 / 共培養 / 臍帯血 / ティッシュ・エンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
臍帯血移植は造血幹細胞移植の有望な方法であるものの、含まれる造血幹細胞数が少ないために小児への移植に限定されている。培養系において臍帯血中の未分化な造血系細胞(造血幹細胞)を効率的に増幅することができれば移植の適応範囲が大幅に広がることから、本研究では三次元培養系において造血幹細胞を増幅する方法を確立することを検討した。この際、増幅を支持するストローマ細胞に他家の細胞を用いると移植時に問題となる可能性が高いため、自家の成分のみで増幅することが望ましい。そこで臍帯血由来の成分に着目し、それらが造血幹細胞の増幅におよぼす影響を調べた。 まず、臍帯血中の細胞分画の違いが増幅に及ぼす影響について検討するために、臍帯血中の全細胞(UCBCs)を培養した場合と、全細胞から単核細胞分画(MNCs)を分離して培養した場合を比較した。その結果、造血幹細胞の増幅度はUCBCsを培養した時の方が良好であったため、臍帯血中のMNCs以外の成分が増幅に有効であることがわかった。また、いずれの細胞を培養した場合も、高密度で培養した時の方が低密度の場合に比べて造血幹細胞の増幅度が高かったことから、細胞間相互作用が増幅に有効であることが示唆された。 次に、臍帯血に含まれる血漿成分が増幅に及ぼす効果を調べるために、ウシ胎仔血清(FBS)の代わりに臍帯血血漿(UCB-P)を添加した培地を用いて培養を行った。その結果、造血幹細胞の増幅にUCB-Pが有効であること、およびその指摘濃度は10%であることを確かめた。また、FBSを用いた場合は低密度培養時に高密度よりも増幅度が大幅に低かったのに対して、UCB-Pを用いた場合は密度の差による増幅度の違いは少なかったことから、UCB-Pには細胞間相互作用を補完する働きがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臍帯血中の造血幹細胞を効率的に増幅できる培養法を確立するという目的に対し、本研究では、まず臍帯血中のストローマ細胞を増殖させ、そのストローマ細胞を利用して造血幹細胞増幅することを計画したものの、現時点では良好な結果は得られていない。 そこで、他家の細胞を用いることなく造血幹細胞を増幅する方法を確立するために、臍帯血中の成分が増幅におよぼす影響について検討した。細胞の分画や臍帯血血漿が造血幹細胞の増幅におよぼす影響を調べたところ、臍帯血血漿の有用性が確かめられた。 これらの結果から、造血幹細胞を増幅するための新たな方法が提案されたとともに、この方法は安全性が高くコストも安いことから、現実的な増幅方法となることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
臍帯血中のストローマ細胞を三次元培養系において増殖させるための実験では、新たな刺激因子やそれらの組み合わせを検討する。 造血幹細胞の増幅に関して、近年、polyvinyl alcohol (PVA) が有効であることが報告されたことから、三次元培養系において PVA の効果を確かめる予定である。臍帯血血漿は得られる量が限られるため、PVAを培地に加えることで臍帯血血漿の使用量を低減できるかどうかを調べる。また、これまでの検討では、凍結保存された臍帯血から臍帯血血漿を分離して使用してきたものの、この血漿には凍害保護剤が含まれることから増幅に悪影響をおよぼす可能性がある。そこで、臍帯血の採取直後に血漿を分離することで、凍害保護剤を含まない血漿を調製して実験に用いる。
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