2023 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of NOX4-mediated mechanotransduction in mechanically-induced cardiac failure
Project/Area Number |
20K12598
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
貝原 恵子 岡山大学, 総合技術部, 技術専門職員 (60638641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 恵治 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40252233)
入部 玄太郎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90284885)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | NOX4 ( NADPH Oxidase ) / メカノトランスダクション / 活性酸素 ( ROS ) / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
常に機械刺激を受けている心臓においては、メカノトランスダクション(力学刺激を受け細胞が生理反応に転換する過程や分子機構)の理解が、重要である。また、活性酸素(ROS : Reactive oxygen species)は病的原因や老化原因物質として負のイメージが強いが、生命にとって重要な生理活性物質であり、細胞の分化や免疫などに関与している。これまでに、ROS産生を制御するNADPHオキシダーゼファミリーのNOX4(NADPH oxidase 4)が、心筋細胞において伸展時にROS産生を増加し収縮力を増強することを明らかにしたが、そのメカニズムついては不明である。また、慢性的なメカニカルストレスに対するNOX4由来のROSの影響についても明らかでない。そこで、本研究にて「慢性的なメカニカルストレスで産生されたNOX4由来のROSが心不全移行に関与している」との仮説のもと、NOX4を介したメカニカルストレスがカルシウムハンドリングへ及ぼす影響を明らかにすることを目的とし研究に着手した。 我々は、これまでにNOX4が、伸展負荷時ROSを産生しTRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)を活性化し、収縮力増強に関与することを阻害剤やノックアウトマウスを用いて示唆した。また、NOX4とTRPV1のミトコンドリア局在も明らかにした。しかし、NOX4が慢性的なメカニカルストレスに影響があるとの報告と異なり、我々が行った研究結果では、NOX4ノックアウトマウスを用いて心不全モデル(大動脈横行大動脈縮窄術)を作製しても心不全の発病が認められた。 しかし、ROSと心不全との関係性は重要で、メカニカルストレスによって産生されたROSと心疾患との関連性は今後の病態生理において非常に重要となる。そこで、今後の更なる研究が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、我々は単離心筋細胞において伸展刺激時NOX4由来のROSが産生され、収縮力を増強することを明らかにしてきた。その、メカニズムについて明らかにするためにROSによって活性化されると報告されているTRPV1を介したカルシウム放出経路に着目した。そこで、TRPV1の阻害剤やノックアウトマウスを用いて単離心筋細胞の発生張力測定を行い、伸展刺激時の収縮力増強にTRPV1が関与している可能性を見出した。また、NOX4やTRPV1が、筋小胞体に次ぐ細胞内カルシウムストアであるミトコンドリアに局在していることを、免疫染色法によって明らかにしたが、伸展刺激時の収縮力増強の詳細なメカニズムについては不明である。 そこで、NOX4が慢性的なメカニカルストレスに与える影響を明らかにするために、NOX4ノックアウトマウスを用いた心不全モデルを作製したが、NOX4ノックアウトマウスでは心不全への移行が抑制されたとの報告と異なり16週目の個体では心不全を発病した。この結果は、当初予想した結果とは異なっていた。しかし、この単離心筋細胞においての、伸展刺激時のROS産生増加は確認できなかった。この結果より、長期的な心不全への移行には、NOX4の影響が少ないと考えられるが、心臓のリモデリングにNOX4の関与がないとは言えない。追加実験として、伸展刺激時に産生されるNOX4由来のROSによる不全心への影響を解明するためにスローフォースレスポンス測定を行い、亜急性的な負荷応答を単一の心筋細胞にて再現した。この結果においては、WTマウス由来の心筋細胞応答では、伸展負荷直後と5分後の収縮力に有意差があったが、NOX4ノックアウトマウス由来の心筋細胞においては、有意差がなかった。よって、更なる研究が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの我々の研究によって伸展刺激時NOX4由来のROSが産生され、TRPV1を刺激しカルシウム動態に影響している可能性は示唆されたが、詳細なメカニズムの解明については、今後更なる研究が必要となる。 慢性的なメカニカルストレスで産生されたNOX4由来のROSが心不全移行に関与しているとの仮説のもと、NOX4ノックアウトマウスを用いて心不全モデルマウスを作製したが、これまでの報告と異なり、瞬間的な伸展刺激時にROS産生増加のないNOX4ノックアウトマウスを用いて心不全モデルマウスを作製しても、心不全病態の進行が確認できた(術後16週目)。 そこで、亜急性的な負荷応答を単一の心筋細胞にて再現するスローフォースレスポンス測定を行ったところ、WTマウス由来の心筋細胞伸展負荷応答は、伸展直後と5分間伸展後の収縮力において有意な収縮力増加が確認できた。しかし、NOX4KO由来の心筋細胞においては、有意差が確認できなかった。つまり、NOX4由来のROSが伸展負荷時の収縮力の増大に、影響を及ぼす可能性があるが、心不全移行の主たる原因とは言えない。 そこで、NOX4由来のROSの関与が示唆されていて、かつカルシウムイオンを制御するTRPV1の心不全への影響を明らかにするために、TRPV1ノックアウトマウスを用いて心不全モデルを作成し、伸展刺激時のTRPV1由来のカルシウムが心臓の慢性的負荷応答にどの様に影響するのかを明らかにする。亜急性的な負荷応答を単一の心筋細胞にて再現可能なスローフォースレスポンス測定も行い、急性的な負荷応答、亜急性的、長期的負荷応答を比較することで、より詳細なTRPV1に対するメカニカルストレスの影響を明らかにすることが可能である。
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Causes of Carryover |
研究遂行上、予定していた打ち合わせのための旅費の支出が少なくなり、残高が生じた。予算は、今後の必要な消耗品や動物維持費等の支出にあてる。
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