2022 Fiscal Year Annual Research Report
WPW症候群の顕在化メカニズム解明に向けたシミュレーション研究
Project/Area Number |
20K12605
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
原口 亮 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00393215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 高明 昭和大学, 医学部, 教授 (40349113)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 情報総合センター, 教授 (80396259)
芳本 潤 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立こども病院(臨床研究室), 臨床研究室, その他 (20795330)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体シミュレーション / 不整脈 / WPW / 小児 / モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
副伝導路(Kent束)を介した伝導が成立しWPW症候群の顕在化に繋がるのは副伝導路がどのような形態的特徴や電気生理学的特徴を有している場合かを明らかにするというテーマについて,シミュレーションシステムを構築し実験を実施した.Kent束の導電率が高くなるほど興奮伝導が成立しにくくなるという直感と反する結果を得て,その原因が source-sink relationship にあることを明らかにし,解析結果を論文発表した.合わせて加齢や性差にともなう電気生理学的変化を再現できる数理モデルを構築し,加齢変化や性差によるイオンチャネル電流の変化は,副伝導路を介した興奮伝導の成立の有無にはほとんど影響を与えないことを明らかにした. WPW症候群における心房細動合併から心室細動への移行メカニズムの解明というテーマについて,副伝導路の不応期に着目したシミュレーション実験を実施した.副伝導路を介して心房から心室へ伝わる順伝導の場合と,心室から心房へ伝わる逆伝導の場合とで,不応期が異なるという臨床報告と一致した結果を再現できただけでなく,細いKent束で心房・心室が接続されているという形態的特徴が,伝導の向きの違いによる不応期の違いを生み出している要因であることを見出した.さらにNaチャネル電流遮断は順伝導における不応期を延長することで抗不整脈作用を示すが,逆伝導における不応期をほとんど変化させないことが明らかとなった.これらのシミュレーション実験結果と整合する臨床報告は今のところ見当たらないが,Naチャネル遮断薬により順伝導が生じなくなり心電図上でΔ波が消失したとしても,逆伝導の生じやすさは変化しておらず早期興奮心房細動のリスクは変化していないことが示唆された.心室細動への移行の再現には至っていないが,WPW症候群の顕在化および心室細動への移行メカニズムに重要な示唆を与える結果を得た.
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Research Products
(3 results)