2020 Fiscal Year Research-status Report
Integrated organoid system with mature vascular network and long-term perfusion
Project/Area Number |
20K12608
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
二井 信行 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10508378)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロ流体 / 血管新生 / リモデリング / 長期灌流培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞は,血管新生とリモデリングの長期間の過程を経て毛細血管構造を形成する.これらのプロセスを生体外で再現できれば,再生医療,特に移植可能な厚みのある組織を人工的につくり出すことに貢献できる.しかし,これまでの主要なIn vitro自発的ネットワーク形成用システムは,通常は5日以内,長くても1週間程度の培養継続にとどまっていて,これらのデバイスによる血管新生の再現と解析は多く見られるものの,リモデリング,すなわちその後も適切な壁せん断力を印加しつつ培養を続けていくと発生した管腔がその分岐数を減らし,管腔幅を広げて安定していく過程を再現することは容易でない.血管新生は可能でもリモデリングが再現できていない理由は,自発的に形成された血管ネットワークに長期的にアクティブな灌流を実現するのが難しいためである. そこで,我々は,生体外での自発的かつ成熟した血管網構造の再現のため,長期マイクロ灌流可能な毛細血管網デバイスを開発した.特に,従来より用いられてきた点字マイクロ流体制御の発生する非生理的な強いパルス流と逆流が管腔形成に与える影響を確認する目的で,点字流体制御の利点を生かしつつ流量変動を抑えたアナログ波形(定流量波形)による点字駆動方式を開発した.このアナログ波形駆動で血管内皮細胞をハイドロゲル内に包埋した状態で周囲を灌流させつつ培養したところ,強いパルス流は管腔形成の初期段階であるメッシュワークを大きく抑制することがわかった.後段階,つまり開通した管腔内を灌流させる場合はパルス流が有効にはたらく可能性もあるため,血管新生の段階に応じて波形を最適化することが重要であるといえる. また,混相流シミュレーションを用いて細胞懸濁ハイドロゲル導入用流路の構造を最適化することで,デバイスへの細胞導入の成功率を改善した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,本年の技術的進展により,長年の実験遂行の妨げとなっていた,細胞をゲルに懸濁して播種するプロセスの歩留まりを大きく改善(30%→90%)できた.研究の本筋とは異なるが,このことが大きく研究全体の進展を促すこととなった. また,単純なアナログ点字駆動を発展させ,脈流と逆流を相当数抑制した灌流を可能にする方法を開発したことで,脈流と逆流の影響を当初計画よりも明確に調べることが可能となった.当初は脈流と逆流が全体にむしろ血管新生を促進することを想定していたが,実験の結果,抑制も重要であることが早期に分かったことが研究の進展に寄与したと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,各種灌流条件下で,安定的に管腔を開通させて管腔内灌流を実施するための条件を探索し,早期に長期リモデリングを伴う実験を安定的に再現できるための条件を整える.特に,流路設計にまだ改善の余地があると考える.これまで,ゲル導入の歩留向上と脈流と逆流の低減を中心に流路設計を最適化することを試行してきて,その結果,細胞培養や管腔形成にとっては成功率を下げる結果をもたらしていることが考えられる.本年度に実施した技術的な検討により,流路構造以外の部分でこれらの問題を改善できることがある程度明確になったため,今後は,流路やデバイスの構造については,細胞培養と管腔形成の効率化と再現性向上をねらった最適化に切り替える. 培地中の血管内皮増殖因子(VEGF)の有無がメッシュワーク形成に与える影響としては,いまのところ予備的であるが明らかにしている.適切なVEGF量も,やはり管腔形成のステージによって変わる可能性が見出された.このことも踏まえて,今年度は培地中VEGF量を測定する方法を導入して,より明確なVEGF量の条件の統制を伴う実験に移行したい. また,管腔形成を安定化することが期待される周皮細胞との共培養についても来年度導入計画している.
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Causes of Carryover |
新型の細胞培養用デバイスの製作費として概ね計画どおりに研究費を使用した.残った23,104円は年度末に使用を見込んだ額の未使用分である.来年度に細胞培養用試薬・器具代として使用予定である.
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Research Products
(3 results)