2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of blood cell's response to constant and fluctuating shear stresses
Project/Area Number |
20K12609
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 宣夫 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (00568644)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 浩二 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80399807)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 血液損傷 / 高せん断応力 / 画像解析 / 赤血球変形能 / 血小板活性 / 血小板凝集 / 機械式血液循環装置 / 流れの可視化実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が開発したせん断応力負荷装置と顕微鏡とからなる実験システムを用いて豪州研究協力者Griffith大学M. Simmonds博士, A. MacNamee博士およびPrince Charles病院救命救急研究グループJ.Fraser教授らと共に行った研究成果として、高せん断に起因した新しい赤血球損傷指標として歪形状が挙げられる事、さらに画像解析手法によるその定量評価が可能である事などを示す結果を得た(学術誌Sci Rep 2021採択)。さらに、容積型のせん断負荷装置を用いて、一様せん断負荷に対する血液損傷指標としての血小板活性、溶血、血漿タンパクフォンビルブランド因子(vWF)の細分化現象の同時評価実験を行った結果、10Paのせん断応力を超えてくると血小板活性が進む事、12Paのせん断応力下においては血漿タンパクvWFの損傷がある事など研究成果を得た(学術論文Journal of Biomechanics採択)。加えて、せん断装置を利用し溶血現象と血栓誘発につながる血小板凝集現象の関連性を検証した結果、溶血量に応じた凝集塊サイズの増大を認める結果を得た(学術論文Journal of Biorheology採択)。さらに、これらの研究成果を2022年4月開催の人工心臓と補助循環懇話会にて報告して医師や研究者と議論した結果、さらに血液循環補助装置を用いたIn Vitro実験を行う必要性を理解できた。 上記の一様せん断負荷装置に加えて、変動せん断応力下の血液細胞挙動を理解する為、正弦曲線的にせん断応力が発生する装置を新たに試作した。現在、その妥当性評価実験の結果、周期的に変化するせん断流れ場において単一赤血球の流動変形挙動を安定して撮影する事に成功した。この成果を今年度のヨーロッパ人工臓器学会にて報告予定である。このように、研究プロジェクトは概ね順調に進んでいると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年立てた計画通り、一様せん断負荷装置を用いた豪州と行った研究成果が、学術雑誌Journal of BiomechanicsおよびScientific Reportsに採択され、学術論文として認めて頂いた。加えて、国際バイオレオロジー学会(2nd Joint Meeting of ESCHM-ISCH-ISB Japan (The European Society for Clinical Hemorheology and Microcirculation (ESCHM), The International Society for Clinical Hemorheology (ISCH) and The International Society of Biorheology (ISB).))において機械式補助循環装置と血液損傷のオーガナイズドセッションにおいて、報告させて頂いた。さらに、膜型人工肺などの機械式補助循環装置利用時の溶血レベルが血栓誘発に関係するという仮説の妥当性検証を行う実験をした結果、統計的な有意差は得られなかったものの凝集塊サイズの増大を認める結果を得た事で、2021年日本バイオレロジー学会年会での学会発表およびJournal of Biorheologyに学術論文として採択頂く事ができた。また、一様せん断負荷装置に対する温度制御機能を付加する改良を施す事ができた事や、変動せん断応力発生装置として、スライダクランク機構を取り入れる事で正弦曲線的なせん断応力変化を発生させる装置の試作に成功し、妥当性評価実験を行った結果からは良好な反応を得ている(2022年9月ヨーロッパ人工臓器学会発表申請予定)。血漿タンパクからフィルタを用いて血小板タンパクvWFを抽出する手法を用いる事で、血漿中のvWFの複数バンド帯をより精度よく可視化評価できる事を見出し、2021年9月ヨーロッパ人工臓器学会にて発表した。また、血小板の活性度評価法として、共焦点顕微鏡と蛍光標識法を用いた方法を応用し、血小板状態の詳細を画像解析的に評価する手法を構築し、学会発表を行った(2022年3月ライフサポート学会フロンティア講演会)。このような理由により、本プロジェクトは順調に進んでいると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
一様せん断負荷装置を用いた更なる研究として、既に学術誌Scientific Reports2021に採択された画像解析による赤血球輪郭情報の定量化手法を応用し多数の健常赤血球に対するせん断負荷実験を行って健康な赤血球変形能範囲を同定する。さらに、豪州研究協力者らと連携しつつ、赤血球変形能について健康範囲とダメージ範囲の閾値がどこにあるか検証する。また、一様せん断負荷装置に対して体温環境に温度をコントロール可能に改良し、体温環境下における赤血球・血小板のせん断応答性の詳細を明らかにする。直近の成果として、変動せん断装置を試作しこれを用いた赤血球変形挙動の観察結果、周期的な赤血球の規則正しい急激な形状伸展と穏やかな形状回復挙動を確認する事ができた。そこで、さらにこの装置に対して改良を行い、直接的に流れ場の幅を定義する事および実験装置の動作測定を可能にする事で、入力としてのせん断応力変化に対する出力としての形状応答を明らかにする。その後で、繰り返しのせん断応力負荷とそれに伴う損傷現象の出現の関係性を明らかにする。そして、一様せん断流れおよび変動せん断流れにおける赤血球の形状変化応答性、血小板の活性化挙動の解明に役立てる。共同研究先の独国Charite研究所とは、コロナの影響で遅れていたが昨年秋より申請者研究室修士学生が留学開始した。現在せん断応力に起因した血小板活性に関する新しい知見獲得に向け、研究中である。上記のせん断負荷装置を用いた実験と並行し、血液ポンプを用いたIn vitro血液実験を行って、デバイスに起因した血液細胞の反応性を赤血球と血小板について詳細に検証する事も検討する。血栓形成の三大血栓因子の「流れ」条件がいかに血小板活性や血栓形成につながるか、一様・変動せん断負荷装置および血液ポンプを用いた実験で明らかにする。
|
Causes of Carryover |
昨年度は計画通り研究費を使用いたしましたが、2000円未満の残高が生じる結果となりました為、次年度使用額が生じる結果となりました。ご承知おき頂けますと幸いです。
|
Research Products
(15 results)