2021 Fiscal Year Research-status Report
体表部の中赤外減衰全反射測定による無侵襲血中脂質濃度予測
Project/Area Number |
20K12615
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木野 彩子 東北大学, 医工学研究科, 学術研究員 (30536082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非侵襲血中脂質濃度計測 / 中赤外ATR |
Outline of Annual Research Achievements |
血中脂質濃度の無侵襲計測を念頭に,摂食前後の数時間にわたり体表部(指先)の赤外減衰全反射(ATR)吸収スペクトルを測定し,その推移を同時刻に直接測定により得た全血中の脂質成分濃度と比較しながら追跡した.さらに,得られたスペクトル情報に対し多変量解析を行った. 中赤外の指紋領域における体表部の赤外ATRスペクトルより,血中中性脂肪トリグリセリド濃度の部分最小二乗(PLS)予測を行うと,成分数を3とした場合の一個外し交差検証の結果で信頼区間±15%程度の予測が可能であった.各波数における吸光度を説明変数としている.予測式における各説明変数の因子負荷量は,カルボニル基よりもグリセロール由来の吸収波数で大きい結果となり,トリグリセリドは代謝の過程で酵素による加水分解を受け,細胞膜である脂質二重膜を通過し末梢組織の細胞間質液中へと分配される際には遊離脂肪酸および基幹構造グリセロールへと変化すると考えられる代謝機序を裏付ける結果となった. さらに,低密度リポタンパク(LDL)コレステロールや高密度リポタンパク(HDL)コレステロール濃度に関しても同様の検討を行った.いすれのコレステロールにおいても,体表部の赤外ATRスペクトルからの血中濃度のPLS予測結果は,成分数を3とした場合の一個外し交差検証の結果で信頼区間±8%程度となり,同条件のトリグリセリドよりも良好な結果を示した.因子負荷量は血中でコレステロール成分を内包し運搬するリポソームを構成するリン脂質由来の吸収波数の寄与度が大きいことも確認された.さらにLDLコレステロールに関しては,その構成において割合の大きいアポリポタンパク由来の単一の吸収強度と血中濃度の間に高い相関が見出された. 以上のように体表部赤外スペクトル情報からの非侵襲の脂質成分の血中濃度予測と共に,離散波長光源の導入によるシステムの小型化/低コスト化の可能性も示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である摂食後の血中~体表部の細胞間質液中における脂質代謝機序の解明において,赤外吸収スペクトル情報の多変量解析により仮説を裏付ける結果を得ると共に,非侵襲血中脂質濃度計測に対しても適用可能性を示した.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの結果で得られた体表部の赤外吸収スペクトルからの血中脂質濃度予測式に関して,個人差を検証するため被験者を増やす方向でさらにデータの集積を行う.
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