2021 Fiscal Year Research-status Report
末梢交感神経電気刺激によるエネルギー代謝の人工制御法に関する開発研究
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20K12616
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 大介 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (60536960)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 末梢交感神経 / 機能的電気刺激 / 糖代謝 / 脂質代謝 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常及びインスリン抵抗性亢進下における末梢交感神経線維への電気刺激が糖及び脂質代謝に及ぼす影響を明らかにするために、骨格筋及び脂肪組織でのmRNA発現ならびに脂肪組織中脂肪酸組成を検討した。 麻酔下にて標準食ラットまたはインスリン抵抗性を有する高脂肪食ラットの片側坐骨神経内交感神経信号を微小電極を用いて導出し、その電極を介して交感神経線維を60分間電気刺激した。 その結果、健常ラットでは両側のヒラメ筋及び長趾伸筋において、Pgc-1αの発現量が非刺激群に対して高値を示す傾向にあった一方で、高脂肪食ラットでは、非刺激群との間で骨格筋のPgc-1α発現量に有意差はみられなかった。β2アドレナリン受容体、Glut4及びUCP3発現量についても同様に検討したが、健常及び高脂肪食ラットいずれも電気刺激の影響はみられなかった。なお、いずれのラット群においても、刺激側と対側との間でmRNA発現量に有意差はみられなかった。 脂肪組織中脂肪酸組成では、多くの飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸含有量において、健常ラットの精巣上体及び皮下脂肪組織では刺激群が非刺激群に対して低値であった一方で、高脂肪食ラットではこのような差異はみられなかった。 ラット片側後肢末梢交感神経への電気刺激は、インスリン抵抗性の有無にかかわらずインスリン非依存的に糖取り込みを亢進することを昨年度明らかにしており、この作用において、少なくとも健常ラットの骨格筋では、ミトコンドリア生合成に関与するPgc-1αによってエネルギー産生を促進したことが背景にある可能性が示唆された。また、この電気刺激は健常ラットの特に精巣上体及び皮下脂肪組織での脂肪酸蓄積を減少させる可能性が示唆された一方で、電気刺激が脂肪組織中脂肪酸組成に及ぼす作用は、健常ラットと高脂肪食ラットで異なる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は3年の研究期間を設定しており、(1)末梢交感神経電気刺激中のインスリン抵抗性亢進モデルラットの糖取り込み定量、(2)末梢交感神経電気刺激の糖取り込みメカニズム解明、ならびに(3)末梢交感神経電気刺激の脂質代謝に及ぼす影響の3つのテーマについて主に検討する計画である。 これまでに糖取り込み量の定量は完了しており、今年度は、ラットへの末梢交感神経電気刺激が糖取り込みを亢進する際のメカニズムを解明するために、骨格筋での遺伝子発現の検討がほぼ完了した。また、電気刺激が脂質代謝に及ぼす影響についても、脂肪組織中脂肪酸組成の測定はほぼ完了した。 電気刺激が糖及び脂質代謝に作用する際の分子メカニズムの検討方法として、既に骨格筋における糖代謝に関連するタンパク発現については実験条件確立のための予備的検討を既に開始しており、脂質代謝に関する解析についても、実験サンプルは採取済みであるため、未だ不足している実験データを補完するために少数の実験を行う必要はあるものの、計画通りに実験を完了する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
末梢交感神経への電気刺激実験を行ったラットの組織を用いて、糖及び脂質代謝制御に関係するタンパクの発現について検討し、この電気刺激が代謝系に及ぼす作用の分子メカニズムを明らかにするとともに、これまで得られた研究結果を成果としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、出張を伴う学会発表がほぼなくなったことで、旅費の支出がなかった。支出を見送った旅費を実験試薬等の消耗品費に充てることで、実験の効率化が可能になったが、端数は次年度使用額として残った。最近あらゆる物品の価格が高騰しているため、次年度使用額は次年度購入予定であった試薬等消耗品費の値上げ分として吸収される見込みである。
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Research Products
(3 results)