2021 Fiscal Year Research-status Report
2-Dimensional fibrin aggregation imaging using birefringence phase difference
Project/Area Number |
20K12635
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Research Institution | National Institute of Technology(KOSEN),Numazu College |
Principal Investigator |
横山 直幸 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 准教授 (90710591)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血液凝固 / フィブリン / 複屈折 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液凝固のトロンビン-フィブリン形成過程が説明されてから100年以上が経過したが、体外補助循環医療においては凝固の最終段階である「血栓形成」の視認が抗凝固プロトコールの重要な指標であり、前駆物質であるフィブリン凝集の検知・予測は実現していない。このため、遅延フィードバックによる血栓制御が限界であり、微細な血栓形成・抗凝固薬の過剰投与が不可避となっている。これは、血栓の前駆物質であるフィブリン凝集体が、可視光波長以下の微細物質であり、吸光・反射を原理とした計測が原理的に不可能であることが理由である。 そこで本研究では異方性物質が示す複屈折に着目し、フィブリン凝集により生じる複屈折位相差を計測し、それより遅れて形成されるフィブリン凝集塊による吸光現象との時間差を定量することを目的とした。 血漿試料に対して直交する2つの光軸を設けることで複屈折位相差と吸光が同時に計測できる実験系を構築し、ここにクエン酸Naで抗凝固処理を施した血漿を設置し、Caを添加することで凝固反応を開始して実験を行った。 実験の結果、吸光現象は抗凝固解除から5.56±1.42(分)後に観測されたが、他方、複屈折位相差は抗凝固解除直後から正弦波様の電圧値として変化が観測された。複屈折の計測結果に位相アンラッピング処理を施したところ、複屈折現象は抗凝固解除のために塩化Ca溶液を添加した数秒後(攪拌を目的とした遠心処理中)に生じていることが分かった。 現段階までに得られている結果より、①血漿試料の複屈折を検知(観測)することは可能②吸光現象と比較して5分程度前に複屈折が生じている③血液凝固過程の知見より、複屈折はフィブリン形成~凝集により生じている、などが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血液凝固過程において、血栓(目視可)とフィブリン構造体(不可視)の形成が、どの程度の時間的差異を持っているかを明らかにすることが本研究の大きな目的の一つである。これまでの実験結果では、複屈折現象の厳密な開始ポイントが抗凝固解除処理(血漿試料に塩化Caを添加して攪拌した後にガラス毛細管へ封入して光軸へ設置)の最中である可能性が示されており、「抗凝固解除処理(試料への塩化Ca溶液添加)の前から計測できるシステム構築が必要」ということを示している。このため、計測システム(光軸中央)において塩化Ca添加を可能とする流路-ポンプシステムへの改良が必要である。 また、本研究で試料として用いている豚血液は、食肉処理場にて採血・抗凝固処理を行った後に郵送されているものであるため、抗凝固処理の精度や採血からの経過時間などに大きなばらつきが生じている。これに伴って、抗凝固解除のために用いる塩化Ca溶液の濃度や用量が一意に定まらない点も、研究遅延の大きな原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題である「複屈折現象開始点の計測を高精度化する」という点について、①実験装置の改良(光軸にガラス管を設置した状態で抗凝固解除を行える機構)、もしくは②抗凝固解除プロトコールの再検討(抗凝固薬投与の精度向上、もしくは、厳密にクエン酸ナトリウム濃度の事前計測)などの対策を講じる。これにより複屈折位相差-吸光の時間的な差異の定量が可能なシステムを完成する。 その後、受光器の経時的な電圧変化(絶対値)にも着目し、ACT・APTTや第X因子活性とそれらの相関について回帰分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
前述の事由(複屈折位相差の開始点が厳密に定量できていない)により、計測計の再構築と実験のやり直しが必要となった。これにより、今年度行う予定であった臨床検査(ACT、APTTなど凝固因子の濃度・活性検査)を行えなかった。このため、多くの残額が生じている。 現状の計測精度では、凝固因子(活性・濃度)と実験結果との相関を算出することは不可能であり、この点について、ポンプシステムもしくは実験プロトコールの再検討により改善を図る。
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