2020 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッドバイオナノカプセルと配糖体プロドラッグによる輸送効率の高いDDS技術
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20K12650
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
下田 恵 大分大学, 医学部, 准教授 (40284153)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 配糖体プロドラッグ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度において、配糖体プロドラッグの合成における反応条件の検討を行った。合成法として生体触媒である酵素を用いる手法を試みた。合成原料として、医薬品デノパミンと同じ構造骨格を持つアナログである1-フェニルエタノールを使用した。糖供与体としてグルコースを用いた。1-フェニルエタノール存在下、酵素と糖供与体のグルコースを加え、有機溶媒と水の二層系により反応を行った。二層系としてはアセトニトリルと水を反応に使用した。攪拌反応を行い、反応終了後にデカンテーションを行い酵素エマルジョンと溶媒層を分離した。溶媒層をエバポレーションを行い留去濃縮し、乾固させた。反応混合物を含む沈殿物を酢酸エチルおよびメタノールにより再溶解した。生成物を含む酢酸エチル層およびメタノール層を、シリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーを用いることにより精製を行った。生成化合物は、薄層クロマトグラフィーを使用し、アニリンとジフェニルアミンによる検出を行った。基質である1-フェニルエタノールを、酵素を生体触媒として用いて配糖体プロドラッグを合成する際の至適温度について、反応温度を変化させた反応層を用いることにより調べた。また、反応に用いる反応溶媒について検討した。有機溶媒と水の二層系として用いた、アセトニトリルと水において、水に対するアセトニトリルの比率を変化させた反応層を使用して、反応の最適な溶媒混合条件を調べた。本研究により、1-フェニルエタノールをアナログとして使用する配糖体プロドラッグの合成の酵素的な反応条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は配糖体プロドラッグの合成を行った。配糖体プロドラッグの合成において、医薬品のアナログである1-フェニルエタノールにグルコースなどを結合させる反応に化学的な手法を用いると、多段階の煩雑な工程を経るうえ、多量の有機溶媒を使用する事による環境への負荷が問題となる。グルコースはポリヒドロキシアルデヒドであり、官能基として多数のヒドロキシ基を有していることから、化学的な手法によりグルコースを医薬品アナログの1-フェニルエタノールに結合させる場合、反応点以外のヒドロキシ基をアセチル基で保護する必要がある。さらに、反応点においてグルコースを1-フェニルエタノールに結合させたのち、他のヒドロキシ基に結合した保護基を脱保護する工程が必要となる。初年度に行った配糖体プロドラッグの合成において用いた方法として、酵素を使用して医薬品のアナログ化合物にグルコースなどを結合させる反応を触媒させる手法を検討した。酵素を使用するグルコースの1-フェニルエタノールへの結合においては、酵素内における疎水的な環境に取り込まれた基質である1-フェニルエタノールへ、酵素の触媒作用により、1段階でグルコースが結合することにより、効率的に配糖体プロドラッグの合成を行うことが可能であった。このように配糖体プロドラッグの合成において、環境に配慮したグリーンケミストリーの立場から有益な酵素的な合成法を開発できたといえる。この手法により、当初の目標である配糖体プロドラッグの効率的な合成法の開発を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、酵素的な手法により合成を行う。グルコースを結合した配糖体プロドラッグの調製と同様の合成法により、ガラクトースやキシロースが結合した配糖体プロドラッグを調製する。ガラクトースが結合した配糖体プロドラッグの合成については、化学試薬を用いる合成についても検討する。原料である1-フェニルエタノールと合成試薬であるアセチル化したグリコピラノシルブロミドとして2,3,4,6-テトラアセチルグリコピラノシルブロミド、および、モレキュラーシーブを、炭酸銀の存在下で混合し、ジエチルエーテルに溶解させる。試料が入った容器をアスピレーションを行い減圧したのち窒素置換を行う。容器を遮光し、攪拌反応を行う。反応液をろ過したのち、酢酸エチルを用いて洗浄を行い、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、混合する。炭酸水素ナトリウムを取り除き、上層部を、飽和食塩水による塩析を行う。エバポレーションを行い、酢酸エチルを留去後、混合物をメタノールに溶解する。炭酸カリウムを加え、アスピレーションにより容器内を減圧して窒素置換する。遮光下、撹拌反応を行う。エバポレーションを行いメタノールを留去し、酢酸エチルを加え混合する。上層部の飽和食塩水による塩析を行う。以上の操作により、1-フェニルエタノールの配糖体プロドラッグを合成する。アセチル化したグリコピラノシルブロミドについては、2,3,4,6-テトラアセチルガラクトピラノシルブロミド、および、2,3,4-トリアセチルキシロピラノシルブロミドを使用する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は配糖体プロドラッグの合成原料として医薬品デノパミンアナログ化合物の現有の化合物であるフェニルエタノールと、現有の酵素を生体触媒として使用したため、次年度使用額が生じた。次年度以降の使用計画として、配糖体プロドラッグの調製の際に、ガラクトースを結合させた配糖体プロドラッグを合成するために必要な試薬である2,3,4,6-テトラアセチルガラクピラノシルブロミドの購入を行う。さらに、キシロースを結合させた配糖体プロドラッグを合成するために必要な試薬である2,3,4-トリアセチルキシロピラノシルブロミドの購入を行う。配糖体プロドラッグの合成原料としては、薬理作用の高いスチルベン化合物としてプテロスチルベン、および、その類縁体、クルクミノイド化合物としてクルクミンの購入を行う。さらに配糖体プロドラッグの合成原料として、高い薬理機能をもつアルカロイド化合物の購入を行う。合成した配糖体プロドラッグの薬理作用を調べるために必要なプレートリーダーを備品として購入することを検討している。また、配糖体プロドラッグの薬理活性を調べる際に必要となる培養細胞の購入を検討している。
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