2020 Fiscal Year Research-status Report
後眼部指向型ナノ粒子点眼剤の設計に向けた粒子構造及び眼内移行性解析と至適処方構築
Project/Area Number |
20K12652
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高島 由季 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70236214)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 網膜色素上皮細胞 / リポソーム / siRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の将来的目標は、中途失明の原因上位となる網膜疾患に対し、低侵襲的な治療と予防を可能とするsiRNA点眼剤の開発である。これまでにモノクローナル抗体やトランスフェリンを修飾したリポソームが点眼による後眼部への集積性向上に寄与することを報告している。点眼後の後眼部への粒子の移行経路やリガンド付与による指向性向上機構等は明らかではない。本研究は、ナノ粒子特性や構造解析等の観点から安定かつ後眼部指向性を示すsiRNA搭載脂質ナノ粒子点眼剤の至適な製剤化条件の確立を目的とする。2020年度は、脂質ナノ粒子の粒子特性(表面電位、粒子組成、リガンド付与 等)による網膜細胞への取込みならびに点眼後の眼内移行性への影響を検討した。生体内安定性と網膜指向性の付与が期待されるヒアルロン酸(HA)をリガンドとしたsiRNA搭載リポソームは、CD44(HA受容体)が高発現するラット網膜色素上皮(RPE)細胞に対し、受容体介在的に取り込まれることを確認した。また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等の種々の脂質や多機能性ペプチドを用い、異なる表面電荷をもつリポソームを調製し、細胞内取り込みや点眼後の眼内分布への影響を検討した。RPE細胞おいては、RT-qPCRにより、網膜疾患原因である血管新生増殖因子VEGFの産生を抑制するsiRNAを搭載することでVEGF発現が阻害されることを確認した。さらに、リポソーム表面に、塩基性が高く細胞透過性ならびに細胞内でのエンドソーム回避能を持つ多機能性ペプチド(アミノ酸配列:STR-CH2R4H2C)を付加した正電荷リポソームは、負電荷および中性のリポソームに比べ、RPE細胞へのsiRNA導入効率およびラット点眼後の網膜への移行性を向上することが判明した。多機能性ペプチドによる点眼後の眼内移行性向上やについて引き続き検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットに点眼後のsiRNA搭載リポソームの眼内分布と網膜への移行性を向上するための至適粒子組成の構築ならびに多機能性ペプチドやHA付与による眼内移行性との関連性については、現在検討を進めている最中である。siRNAを安定に保持し点眼し得るナノ粒子の作製・評価に関する基礎的検討については、計画通り進捗し結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、siRNAを搭載した多機能性ペプチド修飾リポソームならびにHA修飾ナノ粒子の詳細な点眼後の眼内移行性評価に加え、脈絡膜新生血管モデルラット等における治療効果の検討を行う。また、作製したナノ粒子の細胞内動態を評価するとともに、In silico解析、クライオ電子顕微鏡、小角X線散乱装置等による粒子構造解析を行い、HA等のリガンドや多機能性ペプチド搭載の有用性、点眼後の眼内移行性と粒子組成・粒子構造や粒子物性との関連性にも視点をおき、siRNA搭載ナノ粒子点眼剤となり得る処方の最適化を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度内に購入した消耗品の支払い手続きが大幅に遅延し、次年度に繰越精算したため。
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Research Products
(3 results)