2021 Fiscal Year Research-status Report
脳内温度分布を推定する選択式脳低温療法用温度管理システムの開発
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20K12664
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
本間 達 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60361721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 南 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20311194)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 選択式脳低温療法 / 数理モデル / 内部状態推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来使用してきた人体頭部数理モデルのシミュレータを改良し,複数のモデルを同時に演算可能とした.すなわち,人体頭部の代わりとなるMasterモデルと,この内部状態推定をおこなうSlaveモデルについて並列計算を可能とした.臨床で安全性が保障されない実験でも数理モデルでは検証可能なので,実際の患者を想定した病態をパラメータとして設定するMasterモデルの内部状態推定法を検討した.臨床で新たな侵襲を施すことなく測定可能な方法について検討し,選択式脳低温療法では,脳内に流入する温度調整したリンゲル液の温度と,脳内から体循環に還流する血流温度が利用可能であることを確認した.これらの温度は,表面冷却式の脳低温療法では,体幹温度と鼓膜温度で代用可能である.これらの温度を用いて,脳内の代謝性熱産生量を推定するアルゴリズムを構築した.具体的にはこれらの温度の変化量を用い,適応フィルタを応用した演算式により推定した,Slaveモデルの基礎代謝による熱産生量との比率を用いることで,脳内の熱代謝を計算して脳内温度分布を決定する. 数理シミュレーションにより,脳低温療法を開始後,約2時間でMasterとSlaveの脳内の熱代謝量が一致して脳内の温度分布が,±0.1℃以内で一致することが確認できた.さらにこの推定温度を用いて脳内温度の厳密な制御が可能であることを示し,また2つのモデルの血流が同期しない場合でも,特定部位の温度を正確に推定可能であることが確認された. この結果については,2022年3月の電気学会全国大会で報告済みである. また,この代謝量推定方法に合わせて模型実験装置を整備して,必要な実験データを取得可能とし,数理シミュレーションの結果と比較してアルゴリズムの有用性を確認するための機器改良を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により,購入を予定していた物品の代替品検討とこれに伴う計画の修正,また新型コロナの感染防止対策を証明するための手順を確立し,これを実践するために予定外の時間を割いたことが影響していると考えている. また,内部状態の推定アルゴリズムが当初想定したものと異なる形式で得られたことは,演算などの時間を短縮した反面,動物実験モデルに関する実験計画の修正を余儀なくされており,研究自体は順調と評価しているが,当初のスケジュールと異なるものになったことは否定しがたい.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に構築した脳内温度分布の推定アルゴリズムを模型実験システムに組み込み,実測値ではなく推定値を用いて模型脳の脳温制御の実験を検討している.これは臨床での脳温制御前提とするものである.脳温推定アルゴリズムで必要な演算量は,実験装置の制御における1ループ時間より大きいので温度管理が遅延する可能性がある.そこで,前段階として,実験データを数理シミュレータに取り込み,数理モデルによる温度分布の計算値の代わりに実測値を使可能に,数理シミュレータを改良する.演算時間の確認後,効率化するように実験装置の制御プログラムを修正し,実験装置の稼働実験をおこなう. 実験装置による温度制御実験をおこないながら,人体の代用として模型脳に入出力する血流温度を用いて計算した脳内温度分布が,模型脳内の温度分布実測値と一致することを確認する. またニホンザルを想定している動物実験をおこなうに当たり,動物の数理臓器モデルを構築する必要があることが2021年度の成果より示されることとなった.これは,実際の動物を用いたMRIの画像データを取得すること,およびこのデータの解剖図との照合により構築していくので,サルの実験に詳しい共同研究者と検討を重ねたうえで,必要な資料の収集をおこない,モデル構築を進めていく.
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Causes of Carryover |
コロナ禍による国内・国外学会がWeb開催になり,予定していた旅費などが不要になり,未使用のまま翌年度に繰り越している.コロナ禍が落ち着きつつある中で, また,コロナ禍等を原因としてメーカーの半導体や部品などの製造に遅滞を生じ,納品が遅くなったことや,購入を予定していた消耗品の代替品選定に通常以上の時間を必要として購入を2022年度に繰り越したことによる.代替品の選定は終了しているので,速やかに発注し購入していく予定である.新型コロナなども含めた世界情勢の変化も踏まえて,当初の想定より購入金額がかかると予想されるので,2022年度予算も含めて全額を使用する予定である.
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