2020 Fiscal Year Research-status Report
認知症診断を目的とした脳波特徴パラメータ自動検出に関する基礎的研究
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20K12672
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
杉 剛直 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00274580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 吉隆 佐賀大学, 海洋エネルギー研究センター, 助教 (00578429)
後藤 聡 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20225650)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症 / 脳波 / 優位律動 / 早期診断 / 脳波自動判読システム |
Outline of Annual Research Achievements |
最も基本的でかつ重要な脳波活動である優位律動を対象として,脳波特徴パラメータと認知症の重症度との関連性を解析した.脳波特徴パラメータには,以前に開発した脳波自動判読システムで採用されている優位律動に関する6項目(振幅,周波数,オーガニゼーションとそれらの左右差)を用いた.正常から重度のアルツハイマー型認知症と診断された19例の脳波データを用いて,解析を行った.15分から30分程度の脳波記録から,雑音混入が少なく閉眼でかつ覚醒状態が良好な50秒の区間を抽出し,脳波特徴パラメータを計算した.まだ少数例での検討であるが,認知症の進行に伴って優位律動の振幅が低下していく傾向を見ることができ,これは先行研究での報告と一致していた.また,認知症の重症度が高い症例において,必ずしも優位律動に脳波的な異常が見られたわけではなかった.これらから,認知症の進行に関連する脳波特徴パラメータには,脳波的には正常から軽度異常の範囲においての変化を捉えることが重要であると推察された. ここまでの解析結果に基づき,記録された脳波データの特徴を詳細に検証するための解析システムの構築を開始した.脳波の特徴は,被検者の状態によって時々刻々と変化していく.従来の脳波自動判読システムでは,脳波記録全体から選択された50秒区間の特徴を評価していたが,あらたに構築を進めている解析システムでは,脳波記録全区間に対して特徴パラメータの評価が可能となった.これまでに,優位律動に関する6項目の脳波特徴パラメータを対象に,パラメータの経時変化のグラフ化,指定した区間における平均値とバラツキを評価できるようになった. 以上より,どのような脳波特徴を中心に解析を進めていくべきかの方向性に目処が立つとともに,脳波データを詳細に解析するための基盤を構築できたため,今後の研究が効率よく進められると判断された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析結果からは,過去に報告された研究との一致性を見ることができた.また,どのような脳波特徴に着目し研究を進めていけばいいかを把握することができた.さらに,研究進捗を円滑に進めていくための解析システムの基盤構築にも着手した.本研究に用いた脳波データは19例で症例数としては十分ではないが,次年度以降に症例数を増やしての検証が可能な状況にある.以上より,現在までの進捗状況は,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度まで検討を行ってきた優位律動に関する脳波特徴パラメータ6項目に加えて,その他の脳波特徴パラメータも対象に加えていく.具体的には,脳波自動判読システムで考慮している他の脳波特徴パラメータ(δ波,θ波など),これまでの先行研究で報告されているもの,それらから派生して有効性が期待されるものも含めていく.また,個々の脳波特徴パラメータに関しても,脳波記録データ全体における変動性や頭皮上での分布,同一被検者での複数記録での変化に着目していく.脳波データの症例数を可能な限り増やして検証を進めていく.特に,正常から軽度認知障害,軽度認知障害から認知症への移行に伴う変化を反映した指標を,脳波特徴パラメータから見いだすことに重点を置いて研究を推進していく.
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