2021 Fiscal Year Research-status Report
認知症診断を目的とした脳波特徴パラメータ自動検出に関する基礎的研究
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20K12672
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
杉 剛直 佐賀大学, 理工学部, 教授 (00274580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 吉隆 佐賀大学, 海洋エネルギー研究センター, 准教授 (00578429)
後藤 聡 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20225650)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症 / 脳波 / 優位律動 / 脳波特徴パラメータ / 早期診断 / 脳波自動判読システム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から引き続き,認知症の進行に関連した脳波特徴パラメータを解析するためのシステム構築を進めた.脳波特徴パラメータとしては,解析システムの基盤としている脳波自動判読システムで採用されている後頭部優位律動に関する6項目(振幅,周波数,オーガニゼーションとそれらの左右差)に加えて,認知症における脳波特徴に関する論文で報告されているコヒーレンス,脳波の各周波数(δ波,θ波,α波,β波)における出現割合や中心周波数などのパラメータを追加し,より多面的な解析を可能とした.更に,脳波特徴は被検者の状態にも依存することから,記録された脳波データを閉眼状態,開眼状態,賦活刺激状態に分けて解析を行えるようにした.また,数百例の記録データを効率よく解析することを念頭に,システム内への記録データ取り込みから脳波特徴パラメータを定量評価するまでの手順の多くを自動化した.ここまでの進捗で,認知症に関連した脳波特徴を解析するシステム構築の目標は達成された. 今年度は,認知症外来にて記録された脳波データ344例を新たに取得した.これらの脳波データに対して,心理検査結果や視察診断結果を加えたデータベース構築に着手した.344例の脳波データから,経年で複数回の脳波記録が実施されていた17名の計89例を選択し,特徴解析を進めた.視察診断に基づき,認知症,軽度認知障害(MCI),それ以外(てんかん,パーキンソン病など)の3群に分けて解析した.また,認知症の進行を表す指標として,心理検査結果よりMMSE-J,WMS-R,CDRを用いた.その結果,認知症とMCIでは,症状の進行に伴って,優位律動の振幅が減少し,徐波(δ波)の出現割合が増加するという特徴が見られた.これらの特徴は,他の研究で報告されているものと一致していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
認知症の脳波特徴を解析するためのシステム構築が順調に進み,概ね必要な機能を持たせることができた.それにより,大量の脳波データを効率よく解析する見通しが明確となった.解析システムには新たに脳波特徴パラメータを追加されて,様々な脳波特徴を解析することが可能となった.さらに,解析に利用可能な脳波データの症例数を,前年度の19例から344例と増加させることができた 344例のうちデータベースとして解析可能なものは89例であるが,解析結果の普遍性,信頼性を評価できる状況には至ったものと判断された.
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Strategy for Future Research Activity |
研究進捗に必要となる,脳波データベースの充実を図っていく.具体的には,現在ある344例のデータで解析に利用できるものは89例であるが,これを増やしていく.並行して,認知症の進行と関連が見られる脳波特徴パラメータの抽出を進めていく.これまでは,個々の脳波特徴パラメータと心理検査結果における1つの指標との関連性を見ていたが,複数の脳波特徴パラメータを組み合わせての評価も検討していく.また,経年で複数の脳波記録が行われているデータからは,加齢との関連性が見られるかも解析してみたい.さらに,脳波データには,認知症以外の症例(てんかん,パーキンソン病など)が含まれていることから,脳波特徴パラメータを利用した認知症との鑑別診断の可能性に関しても考えていく.
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