2023 Fiscal Year Research-status Report
multi-distributed EMR tailored to hospital IoT
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20K12673
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
竹村 匡正 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (40362496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電子カルテ / NoSQL / NewSQL |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの電子カルテシステムは、レガシーなリレーショナルデータベースで構築されている反面、患者IDをキーとした多くのテーブルが結合されているため、スケーラビリティに問題があり、結果として保存するデータが膨大になることでパフォーマンスの低下が問題となっている。また完全性を担保することが前提であるため、データベースの性能と完全性を維持するために、ハードウェアの投資をはじめとする膨大な資源を投入されているのが現状である。その上、膨大なトランザクションによる応答速度低下が発生するため、電子カルテシステム本体のRDBにデータの二次利用等でアクセスすることは基本的に望まれず、またIoT等の導入も想定できない状況にあり、電子カルテシステムによるDXについても大きな制限になっている。 そのため、本研究では、NoSQLやNewSQL、また分散型データベースによるモダンなデータベースアーキテクチャを用いて電子カルテを実装することが可能かを検証することを目的として、CAP定理の観点から一貫性(Consistency)、可用性(Availability)、分断耐性(Partition Tolerance)の3つの観点から検証を試みる。その上で、実際の電子カルテシステムのデータベースのスキーマおよび実際の各種オーダーデータ、SOAP記載、看護オーダー、看護記録などのデータをこれらのアーキテクチャー上に実装したうえで、NoSQLおよびNewSQL上で動作する模擬的な電子カルテシステムのパフォーマンスの検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは、電子カルテシステムにおけるRDBは、一貫性(Consistency)と可用性(Availability)が保証されるCA型であることが要求されていることを前提として、分散型およびインメモリ型のデータベースアーキテクチャによって電子カルテシステムを模倣したデータベーススキーマを検討し、SELECT, INSERTなど基本的なデータベースの操作に対して、どれくらいのパフォーマンスがでるのかについて検証を行ってきた。具体的にはRedisを用いて電子カルテシステムの基本的なスキーマを設計した上で、高付加な操作を行った。NoSQL型にもかかわらず、データの一貫性は担保されており、またインメモリであるため非常に読み書きが高速であった。一方で、高度なクエリやトランザクションには制限があるため、電子カルテシステムへの適用については引き続き検討が必要と考えられた。 次に、昨今の新たなデータベース技術として期待されるNewSQLの一つであるTiDBの電子カルテシステムのデータベース基盤の適用可能性について検討を行った。TiDBは分散型のトランザクショナルデータベースであり、高いスケーラビリティが期待できる。また、分散型のトランザクションを前提としており、ACID特性を保証している。そのため、Redisに対する検証と同様に電子カルテシステムのデータベーススキーマを模倣した上で高付加なSELECT、INSERT操作を行うことでどのようなパフォーマンスとなりうるのかを検証した。結果は読み込み速度はRDBMSに対して圧倒的に早く、書き込みについてはRDBMSに劣る性能になることが判明した。 そのため、実際の電子カルテシステムの多くのテーブルをTiDBに実装した上で実データを踏まえたパフォーマンスを検証するために、実際の病院から診療データを取得したうえで、これらの実装を試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
電子カルテシステムのすべての模倣やデータの取得は、そもそも多くの電子カルテベンダが電子カルテシステム本体のデータベーススキーマおよびデータを開示しない場合が多く、完全な取得が困難であるが、一方で、診療データの二次利用の期待への可能性から、データウェアハウスの実装やや参照系データベースへのアクセスが一般的になりつつある。そのため、現状の病院情報システムにおいてデータ取得が可能な電子カルテデータを取得したうえで、これらのデータの関係をデータベースとして再構築した上で、実際の電子カルテシステムをこれまで検討してきた分散型データベース上に実装することを試みる。現在、共同研究先の病院から関連しうる全てのデータの取得を行っており、実際にTiDBでの実装を検討する。また、診療現場を前提とした電子カルテのみならず、データ二次利用基盤としての利用が期待できることから、病院情報システムにおけるデータ二次利用基盤、特にリアルタイムシミュレーションや機械学習への適用を検討する。
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Causes of Carryover |
民間病院と連携を行った上で、実際の病院情報システムからの診療データ取得を行うにあたり、倫理審査およびデータ抽出を依頼する関係から、データの取得が年度末になった。データを踏まえた上でハードウェアおよび実装を計画しており、これを次年度に行うこととなった。
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