2020 Fiscal Year Research-status Report
LC-Boosterを搭載したカプセル型低侵襲磁気ハイパーサーミア素子の開発
Project/Area Number |
20K12695
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
田倉 哲也 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00551912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体適合材 / 磁束密度 / 透過率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がんへの温熱療法(ハイパーサーミア)の中でも高周波磁場を利用した低侵襲治療技術において、生体内での利用に耐えうる発熱素子を開発することを目的とする。 令和2年度において、発熱素子の構成要素の一つである金属環を最外殻カプセルとして利用するために必要な金属カプセルの形状を明らかにするために、電磁界シミュレーションによる磁界の透過率について検討を行った。最外殻の素材として、従来から金属環として採用している材料としてAu、生体適合性の良好な材料としてTiとステンレス鋼(SUS316L)を選択し、励磁下における円筒状カプセルモデルによる内部中心部の磁束密度の透過率について解析を行った。解析では、カプセルによる内部磁束密度の影響を確認するために、内部は空気のみとした。結果として、カプセルの厚さが同じ条件であれば、Auが最も透過率が低く、Tiとステンレス鋼はほぼ同じ値が確認された。同時に、発熱に寄与するジュール損についての解析を行ったところ、透過率の場合とは逆の結果を示したことから、Tiやステンレス鋼を発熱可能な金属環として利用するためには素子構成を調節する必要性が示唆された。 次に、カプセルの材質をTiに限定し、カプセル厚と長さについて同様に解析を行った。カプセル厚が増すことで透過率は減少するものの、材料の表皮深さ以下の厚さであれば透過率の減少は数%以内に収まった。また、カプセル長の増大によって渦電流の電流路が変化することによる影響が懸念されたが、長さが20 mm以内であれば内部の磁束密度に大きな変化が生じないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LC共振型ワイヤレス給電技術であるLC-Booster方式を導入した発熱素子を生体内で利用可能にすることを目指し、令和2年度においては、発熱素子の構成要素の一つである金属環を最外殻カプセルとして利用するために必要な条件を明らかにすることを目的とし、カプセルとして採用する材料の選定と厚さ・長さといった形状の構成を決定することを予定していた。材料の選定については、従来から採用してきた材料に追加して、新たに生体適合性に優れた材料を検討に入れたことで、生体適合材がもつ電気抵抗率の違いが透過率・発熱に与える影響を確認することができ、候補材料の特定につながる結果が示唆された。そのため、おおむね実施できている。他方、カプセルの厚さ・長さについては、パラメトリック解析により、発熱素子を想定したサイズの範囲内であれば透過率に与える影響は限定的であることが確認できたことから、カプセル仕様を決めることが可能となったため、おおむね実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、最外殻として利用するカプセルの材料や形状が印可された磁界に与える影響を特定することが目的であった。おおむね確認することができたことから、令和3年度では、カプセル型発熱素子の実機を試作し、LC-Booster回路と低キュリー磁性材をカプセル内に配置した際の素子全体の発熱に寄与する損失(消費電力)の測定を一定励磁下において行う。また、カプセル内に配置する回路サイズと、LC-Boosterと磁性材の位置による損失の違いについての検討も行う。なお、損失の測定においては、キュリー点到達による発熱メカニズム変化の影響を抑制するために、印可する磁束密度の強度を制限することを考えている。また、カプセル型発熱素子におけるキュリー温度到達前後の加温特性を明らかにするために、制限のない励磁条件による温度上昇の時間変化の測定を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた実験に使用する部材の検討が間に合わず、その分の物品費を執行することができなかった。この実験については令和3年度に実施する予定である。
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