2020 Fiscal Year Research-status Report
加速器中性子源を用いたBNCT組織線量分布評価体系の確立
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20K12714
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井川 和代 岡山大学, 中性子医療研究センター, 准教授 (90512111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川原 亮 京都大学, 化学研究所, 助教 (00807729)
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80242436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔がん / 三次元培養モデル / 中性子捕捉反応 / 中性子線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年より頭頸部がんに対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の保険診療が開始、さらに新しい加速器中性子源を用いたBNCTの治験も開始され、BNCTに期待が高まっている。BNCT適応可否の判断には、ホウ素集積検査が必須となる。しかしながら、簡便で正確なホウ素集積性検査方法はいまだに開発段階である。そこで、ホウ素濃度とホウ素分布が識別可能なホウ素集積性BNCT検査システムを構築し、加速器中性子源を用いたBNCT組織内線量分布の評価体系の確立を目指す。 今年度は、患者由来の繊維芽細胞と扁平上皮がん細胞株を用いた口腔がん三次元培養モデルを作製し、三次元モデルにおける中性子の線量評価とホウ素中性子捕捉反応(BNCR)の組織学的評価を実施した。京都大学複合原子力科学研究所の原子炉を用いて三次元口腔がんモデルに中性子線を20分間照射した。金箔による熱中性子線量を測定すると、三次元モデル表面のがん細胞で1.52X1012[cm-2]、正常の繊維芽細胞で1.16X1012[cm-2]であった。さらに、口腔がん三次元モデルにホウ素((Borofaran, Stella pharma, Japan)もしくはリン酸緩衝食塩水(PBS, Sigma -Aldrich, USA)を照射2時間前添加後、照射直前に洗浄して中性子を20分間照射した。照射7日後の口腔がん三次元モデルの組織切片を作製しHE染色したところ、ホウ素添加群において表面のがん細胞層が1~2層に対して、PBS添加群では5~6層であった。一方、正常の繊維芽細胞層には両添加群ともに差異はなかった。以上の結果より、口腔がん三次元モデルを用いてBNCRの評価することが確認できた。さらに、三次元培養モデルにおけるホウ素集積性BNCT検査システムを構築し、加速器中性子源を用いたBNCT組織内線量分布の評価体系の確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響により出張が自粛要請され、中性子照射や解析装置の利用時間が制限された。今後のコロナの影響を考慮して、sample作成、中性子照射、解析の担当者をそれぞれ決め、sampleの輸送による評価可能なシステムに変更した。今年度は、三次元口腔がんモデルにおける中性子捕捉反応の基礎検討を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、BNCTの診断に必要なホウ素集積性BNCT検査システムを構築し、加速器中性子源を用いたBNCT組織内線量分布の評価系の確立を目指すものである。今年度は、三次元モデルにおける中性子捕捉反応を組織学的に評価できることを確認した。そこで、まず、口腔がん三次元モデルで加速器中性子源によるホウ素集積性評価システムを構築する。具体的には、口腔がん三次元モデルにおいてホウ素添加2時間後、誘導結合プラズマ質量分析法によるホウ素濃度を測定する。また、CR-39上に組織切片を作製し、中性子線を照射後、原子間力顕微鏡による飛跡解析からホウ素分布図を作製する。ホウ素分布とホウ素濃度の相関性を解析し、三次元培養モデル組織サンプルにおけるホウ素集積性を評価する。さらに、三次元培養モデル同様、動物モデルで加速器中性子源によるホウ素集積性評価システムを構築する。
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