2020 Fiscal Year Research-status Report
ワクチンの新規ベネフィット・リスク分析法による政策評価に関する研究
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20K12717
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
塚本 桂 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40731691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松丸 直樹 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (30597844)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベネフィット・リスク分析 / ワクチン / モデル / シミュレーション / ヒトパピローマ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを対象に、HPV感染症および関連状態、ワクチン接種にともなう副作用も組み込んだ、9つの健康状態からなり、各状態間を確率的に移行する数理モデル(マルコフモデル)を構築した。現状の日本のHPVワクチン政策に従って、対象を日本人女性のみとし、各状態間の移行確率を公表論文、公的公開情報から設定した。この数理モデルを用いて2006年および2015年の子宮頸がん罹患者数および子宮頸がんによる死亡者数を計算し、国立がんセンターおよび厚生労働省の疫学データとの一致度を検証した。すなわち、数理モデルおよび疫学データは5歳年齢幅のデータとし、横軸に5歳年齢幅、縦軸に子宮頸がん罹患者数または子宮頸がんによる死亡者数を取ったヒストグラムを作成し比較した。2006年および2015年とも相関係数は0.9以上となり、数理モデルは実データと極めて一致したと判断された。従って、本数理モデルは今後のシミュレーションおよび一元的ベネフィット・リスク分析に利用可能なことが示唆された。また、本数理モデルの頑強性を確認するため、状態間移行確率を変化させずオーストラリア人女性における2006年および2015年の子宮頸がん罹患者数および子宮頸がんによる死亡者数を算出し、疫学実データとの一致度を日本と同様に評価したところ、相関係数が0.8以上であり、比較的良く一致した。 以上の結果は、2021年3月に開催された日本薬学会第141年会において一般口頭発表を実施した(発表演題番号:28V09-pm08S)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構築した数理モデル(マルコフモデル)は実データとの相関が0.9以上と、十分HPVワクチン接種およびHPV感染症に関わる状態を説明できることが明らかとなり、学会発表を実施できたことから概ね順調に進展していると評価した。しかし、種々の公表値から状態移行確率を決めるうえで、明確な決定基準の設定が出来ていない。本数理モデルをオーストラリアに適合させた場合、相関係数が0.8以上と日本の場合に比較して低下した理由は、状態移行確率がオーストラリアの状況に適合していないためであると考察されており、より普遍的な数理モデルとするためには、科学的に決定基準を設定する必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
各状態移行確率を大小に振って、実データの適合度を算出するトルネード分析法により、科学的に決定基準を設定する。その後、本数理モデルを使用して、感染が拡大しない条件(基本再生産数)を満たすために必要なワクチン接種率等の算出を試みる。 既に障害調整年(DALY)を利用してべネフィットとリスクを一元的に評価する手法を考案しているが、他の重み付けの可能性およびDALYの優位性を検証し、評価方法の確定を目指す。また、いくつかの政策を設定したシナリオを構築し、確立された評価方法を利用して2050年におけるべネフィット・リスクを予測し、政策評価を実施する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で国際学会が取りやめとし、また国内学会もオンライン開催となり旅費が全く発生しなかったために次年度使用額が生じた。 翌年度物品費として使用予定の解析用PCの購入に際して、今後のオンライン会議への対応に万全を期するため、webカメラ、マイク、ヘッドセットなど周辺機器の購入に使用する予定である。
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Remarks |
研究室ホームページ
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