2021 Fiscal Year Research-status Report
「スマートカート」を活用したフレイル予防のための地域活動モデルの構築
Project/Area Number |
20K12728
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中林 美奈子 富山大学, 芸術文化学部, 客員准教授 (30293286)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 雅典 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (30389960)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 電動歩行補助車 / フレイル予防 / 中山間地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「スマートカート」と名付ける電動歩行補助車の開発とそれを活用した中山間地域におけるフレイル予防のための地域活動モデルを示すことである。 1)地域活動の方向性 フィールド地区におけるフレイルの状況を調べるために前年度(ベースライン)と同様の質問紙調査を同じ対象者に行った(回収率100%)。フレイルの有無の変化をみると、良好維持者(非該当→非該当)62.4%、悪化者(非該当→該当)5.5%、改善者(該当→非該当)7.3%、不良継続者(該当→該当)24.8%であった。また、改善要因としてベースライン調査時に①週3回以上外出していたこと、②コミュニティ意識として「地域の生活環境を良くするために自分ができることがあればできるだけ協力したい」と回答していたことが、悪化要因としてべースライン調査時に①生活満足感が低いと回答していたことが抽出された。さらに、地区のステークホルダーや高齢者のヒアリングから、フレイルの有無にかかわらず「農作業」が高齢者の健康やQOLの促進要因になっていることが語られ、地域活動の方向性を「高齢になって農作業が続けられるまちづくり」とした。 2)スマートカートの開発 高齢者の運動機能と農作業の継続の観点から地区踏査、歩行補助車を使った歩行実験、高齢者からのヒアリングを行った。その結果、歩行補助車は高齢者の歩行に関する不安を軽減することが確認できた。また、生活環境の斜度が大きいことや農作業時には運搬が伴うことから、歩行補助車の電動化が望まれた。一方で、市販の電動歩行補助車は坂道では操作が難しいことが確認できた。14°~22°の坂道傾斜もある地区内を安心して歩行できるように必要最低限の電動補助を付加することを開発目標とした。加えて、これまでに開発している非電動歩行補助車の車体に電動駆動装置を付加する形で、後輪2輪駆動の電動歩行補助車を試作した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地域活動の方向性を明らかにするために、①地区高齢者を対象にした質問紙調査と集合方式による体力測定会による健康調査、②住民参加型ワークショップの開催を計画していたが、コロナ感染拡大に伴い集合方式のアプローチは取りやめ、①については質問紙調査の実施のみにし、結果を統計学的に分析した。②については地区のステークホルダーからのヒアリングという形に規模を縮小して実施した。実施内容の縮小はあったものの、「高齢になっても農作業が続けられるまちづくり」という地域活動の方向性を地区のステークホルダーと合意できた点において研究目標は達成できた。また、スマートカートの開発のために、③市販の電動歩行補助車を用いた坂道歩行実験の実施と生体情報(疲労感、歩行速度や心拍等)分析、④歩行実験に基づくプロジェクトメンバーによるブレストと試作機の製作を計画していた。③については、高齢者の協力を得て坂道歩行実験を実施したが、坂道、特に下りで歩行補助車を操作するのはことのほか難しかった。対象の安全性を考慮し研究者らが手を添えて操作したため、生体情報の測定については実施しなかった。④については、坂道での歩行実験結果をもとにプロジェクトメンバーでブレストを行い、試作機を作成できたことは大きな成果であったが、試作機の試用には至っていない点が、今後の課題である。さらに今年度は集合形式によるフレイル予防に関する啓発イベントの開催を計画していたが、コロナ感染拡大に伴い未実施であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)これまでと同様の質問紙調査を同じ対象者に実施し、フレイル出現率や生活実態の変化を観察する。2022年度は質問項目に「農作業」に関する内容を追加する予定である。集合形式による体力測定は実施しない予定である。 2)市販のオフロード(未舗装)対応の電動アシスト歩行補助車ならびに試作した後輪2輪駆動の電動歩行補助車を使用してもらい、荷物を積載して斜面地を行き来できる電動歩行補助車に必要な条件を抽出する。生体情報の測定も再度試みると同時に本研究のビジョンにあった「スマートカート」に生体情報の投入が必要か否かの検討も行う。 3)本研究の現地報告を兼ねたフレイル予防に関する社会発信(啓発)イベントをフィールド地区内で小集団を対象に9月頃に行う予定である。
|
Causes of Carryover |
フィールド地区に出向いてプロジェクト会議を複数回開催する予定にしていたが、新型コロナ感染拡大防止のため、特に県外大学関係者や県外企業関係者が出張できない状況になり、計上していた旅費を執行できなかった。また、ワークショップや社会発信(啓発)イベントの未実施に伴う事業費が執行できなかった。さらに、本研究のビジョンに近い市販の電動アシスト付き歩行補助車(オフロード対応)を探すのに時間を要し、今年度は購入を見送った。次年度使用額は、65歳以上地域高齢者全員対象のアンケート調査の調査費、フィールド地区で実施するプロジェクト会議や啓発イベントの事業費ならびに参加費に伴う旅費(研究協力者含む)、スマートカート試作に係る費用、歩行実験に使用するオフロード(未舗装)対応の電動アシスト付き歩行補助車の購入に使用する予定である。
|