2023 Fiscal Year Research-status Report
Construction of emotional recognition system for health care using AI and physiological model of emotion
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20K12743
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
山下 政司 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40210421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 佳卓 北海道科学大学, 工学部, 講師 (90849142)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 快感情 / 段階別刺激強度 / 線形対応性 / 不快感情 / 生理的指標 / 刺激モダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、生理計測を簡略化するために、単電極でも心電図が計測できる手法の開発を行い、心電図との同時計測の結果、その有用性を確認した。また、電池駆動でも計測可能な単電極心電計を開発し、その特性を明らかにした。 次に、感情生理空間モデルの基軸となる快・不快のうち、本研究で明らかにしてきた快の暫定的生理指標について、その線形対応性を確認すべく爽快感を生じさせる刺激を作成して検証実験を試みたが、作成した刺激内容およびその強度の設定、実験の実施精度に課題が出てしまい、明確な線形対応性を示すことができなかったので、課題解決を図って再度検討する必要が求められた。快の暫定的生理指標は血圧波に基づいているので、感情価を示す質問紙結果との相関や血圧波をCNNによって解析した場合の識別率評価を行い、高い数値を確認した。 不快の生理応答については、覚醒度の異なる不快刺激である悲しみ・嫌悪・恐怖の各刺激および味・音・臭いによる不快刺激それぞれに共通する生理的応答について、連続血圧、心電図、脈波、呼吸波、心拍出量などの時系列データを調査した。これらデータから不快に共通する生理的応答が無いか検討を行った。文献的に示唆される呼吸周波数が上昇する傾向は共通して見られたものの、同時評価した爽快の快感情でも上昇するので、不快生理応答に独自のものとは言えない結果であった。ただし、不快と快を区別するには、快の暫定指標および呼吸波と呼吸性洞性不整脈の相互相関係数を同時評価することが可能性として見出されたので、呼吸周波数との複合パラメータにより、不快に共通する生理応答発見に向けてのヒントが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍やインフルエンザ、溶連菌等の流行が長引いた影響で、人を対象とする生理実験を実施するには、感染対策を含めた様々な環境条件を整える必要があり、多くの生理実験を実施することが困難であった。 また、テーマの一つとする覚醒度が異なる様々な不快に共通する生理応答を見出す研究内容は、非常に多くの文献を探索しても見つからない難問題であることも進捗が遅い理由である。 さらに、心理的受容の個人差と生理応答の個人差とが重畳する特性および些細な事でも被験者の心理状況が変わってしまう上、非常にわずかな変化を捉えなければならない、安定性と繊細さが求められる難易度の高い実験であることも研究が進みにくい要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
作成する感情喚起刺激の設計を見直し、快の暫定生理指標の線形対応性を実証できる実験条件を整えて検証実験を行う。 また、不快の生理指標発見のために、脳科学の文献調査を深めて糸口を探る。脳神経、神経伝達物質等との関連を考慮しつつ、リターンマップ解析、リアプノフ指数解析、相互情報量解析などを実施する。 さらに、2023年度に見出した、快・不快を判別する生理的特徴を複合的に組み合わせた新たなパラメータを各種作成してその有効性を確認する。 最後に、これらの成果を踏まえてAI解析を適用して個人差をある程度克服した感情識別ができるようにする。
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Causes of Carryover |
コロナ感染のみならず、インフルエンザ感染等、他の感染症流行のリスク増大を受け、換気・風量調節・アルコール清拭など十分な感染対策を施したうえで、調査・生理実験等を実施する関係上、実験室の室温・湿度管理を厳密にしなければならず、実験室となるシールドルームの運用上一カ月に実施できる期間が限られ、生理実験の計測評価人数を減らさざるを得なかったことが一つの要因である。被験者数減少に伴い、消耗品、謝金等の支出が減少したことも要因の一つと考えられる。また、コロナ禍を受けた各種の必要部品等の遅延および品切れも要因である。さらには、発表予定の各種学会の開催中止措置やオンライン開催の増加に伴って、旅費交通費の支出が減ったことも大きな原因である。また、論文リジェクトによる論文掲載料未使用も原因である。 2024年度は十分な感染対策を取ったうえで、対面による生理計測実験を追加実施し、当初予定の被験者数に近づける努力をする。その中で、感染対策用物品の購入や生理実験用消耗品等の購入額も増加する。また、対面対応の学会が増えてきているので積極的に参加して発表する。さらに、積極的に論文投稿して掲載費に充てる。
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