2021 Fiscal Year Research-status Report
長期・継続的健康モニタリングを可能とする日常生活歩行速度測定の確立のための研究
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20K12751
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
河合 恒 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50339727)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歩行速度 / 日常生活 / フレイル / スマートフォン / GPS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日常生活歩行速度の測定方法を日内変動、季節変動の分析を踏まえて定義すること、日常生活歩行速度と健康アウトカム指標との関連を明らかにすることである。2021年度は日常生活歩行速度の日内変動とフレイルとの関係を分析した。日常生活歩行速度の季節変動についても検討した。 板橋お達者健診2011コホートの高齢者において、GPSを用いたスマートフォンアプリによって、1ヶ月間の日常生活中の歩行速度を測定した。フレイル関連指標は会場調査において測定した。50回以上の歩行速度計測データが得られた92名を対象とした。早朝、午前、午後、夕方、夜間の5時間帯別の歩行速度の平均値の差を検討した結果、歩行速度は早朝が最も速く、午後にかけて遅くなる傾向で、夕方が最も遅かった。潜在クラス分析から、日常生活歩行速度の日内変動パターンは、歩行速度が速く日内変動が大きいパターンと、歩行速度が遅く日内変動が小さいパターンが同定された。パターンの違いには、高血圧症が有意に関連し、プレフレイルの関連も有意傾向であった。日常生活における歩行速度の変動が大きいことが健康状態を反映することが示唆された。 民間生命保険会社の加入者で、連続して12か月以上アプリを利用し、月に1回以上歩行データを得られた14歳~86歳までの男女1,065名のデータを分析した。歩行速度は夏に遅く、冬に速い季節変動が見られた。ケーデンスは歩行速度と同じ変動パターンを示し、歩行速度の季節変動はケーデンスに依ることが考えられた。ケーデンスは最高気温と-0.812の極めて高い負の相関を認めた。 これらの結果から、気温に対する自律神経系の応答が歩行速度の変動を生じさせており、このために変動が大きいことがより良い健康状態を反映すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去に地域高齢者のコホートで収集したデータや、全国ユーザデータをもとに、研究計画に沿って分析を進め、一定の成果が得られている。 地域高齢者のコホートでは追跡調査を行い、日常生活歩行速度と健康アウトカムとの縦断的な関連を分析するためのデータを収集した。全国ユーザデータについても継続的にデータ提供を受けられる体制が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
地域高齢者コホートについては、スマートフォンアプリを使用して日常生活歩行速度を測定したため、対象者がスマートフォンを使用できる者に限られ、結果として、フレイル高齢者が含まれなかったことが課題であった。このため、これまでの研究ではプレフレイルとの関連を調査するのに留まっていた。また、追跡調査を実施し、日常生活歩行速度と健康アウトカムとの縦断的な関連について分析を試みたが、新規フレイル発生数が少なく、十分な分析が行えなかった。これらのことから、より多くのフレイル高齢者からのデータ収集が必要である。 従って、研究計画最終年度となる2022年度は、地域高齢者のコホートにおいて、スマートフォンアプリだけでなく、加速度計などのデバイスも用いて日常生活歩行速度データを収集し、より多くのフレイル高齢者の日常生活歩行速度データが得られるようにする。また、これまでの対象については引き続き追跡調査を行い、日常生活歩行速度と健康アウトカムとの縦断的な関連について分析を行う。全国ユーザデータについても、健康アウトカムデータを取得し、縦断的な分析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、計画していた学会出張がオンライン開催となった、地域高齢者コホートにおける調査が、感染対策のため規模縮小して実施となったことなどによって次年度使用額が生じた。 最終年度は加速度計などスマートフォン以外のデバイスによる日常生活歩行速度測定の妥当性検証のためのデバイス購入、学会出張、研究論文のオープンアクセス化に研究費を使用する。
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Research Products
(9 results)