2023 Fiscal Year Research-status Report
排泄介助支援のための膀胱内蓄尿量予測システムの構築
Project/Area Number |
20K12769
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
栗原 陽介 青山学院大学, 理工学部, 教授 (50552600)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 排泄介助 / 蓄尿量 / 体内水分量 / 尿意 / 排尿時刻 / 超音波センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,体内水分収支を考慮した膀胱内蓄尿-尿意伝達モデルを構築し,超音波センサの出力信号および,それまで摂取した飲料の種類,量,排尿量をもとに,排尿時刻の予測を逐次的に行う手法の開発に取り組んだ. 提案手法における体内水分収支を考慮した膀胱内蓄尿-尿意伝達モデルは,i) 膀胱内蓄尿量モデル,ii) 体内水分量の推移を表すモデル,iii) 尿意伝達モデルの3つのモデルにより構成される.i) 蓄尿量モデルでは,腎臓で濾過された原尿が尿管を経由し膀胱に流入し蓄積する蓄尿量の推移を表す.ii) 体内水分量の推移モデルでは,飲料や食事を摂取することで体内に吸収される水分量と,皮膚,粘膜,呼息などの不感蒸散や,排尿により体内から排出される水分量に基づく体内水分量の推移を表す.iii) 尿意伝達モデルでは,蓄尿量の増加にともない上昇する膀胱内圧が排尿中枢への伝達されることで誘発される尿意の誘発過程を,任意の時刻において,尿意が発生していない確率,1回尿意を感じる確率による確率微分方程式で表す.この確率の推移は,膀胱内蓄尿量モデルおよび体内水分量の推移を表すモデルを構成するパラメータにより変動する排尿回数の期待値により決まる.提案手法では,モデルパラメータを説明変数,実際の排尿時刻を目的変数とし,ガウス過程回帰により期待値の推定を行った.推定した期待値を,尿意伝達モデルに適用し,確率微分方程式の解として尿意が発生していない確率と,1回尿意を感じる確率の推移をシミュレーションする.シミュレーションの結果に基づき,1回尿意を感じる確率が,尿意が発生していない確率を超える時刻を予測排尿時刻と予測する.上記の手法を超音波センサの出力信号が計測されるごとに行うことで,逐次的に排尿時刻を予測する手法の開発に取り組んだ.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では,実生活での環境における排尿時刻の予測を最終的な目標としている.そのためには,実際の生活における様々な食事や飲料を摂取する条件下で排尿時刻を予測する必要がある.2022年度までは,検証実験として決まった時刻に決まった水分量を摂取するシンプルな条件で提案手法を評価してきたが,2023度は最終的な目標を考慮し,新たな実験条件として,C1) 任意の時刻に任意の水分量を摂取する,C2) 任意の時刻にカフェインを含む飲料を任意の量摂取する,C3) 任意の時刻に任意の量の食事を摂取する,の3条件を追加することで,より実生活に近い条件下での検証実験を行い提案手法の評価を行うことができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,2023年度に構築した体内水分収支を考慮した膀胱内蓄尿-尿意伝達モデルにおける3つのモデルの評価および,排尿時刻予測の精度向上のためのモデルの再検討を行う.また評価の精度を向上するため,2023年度に実施した実験条件によるデータを,実験参加者をさらに増やし取得する. また,本課題の総括として,得られた知見をもとに新たな展開について検討する.
|
Causes of Carryover |
2023年度は,より実生活に近い条件下での検証実験として,C1) 任意の時刻に任意の水分量を摂取する,C2) 任意の時刻にカフェインを含む飲料を任意の量摂取する,C3) 任意の時刻に任意の量の食事を摂取する,の3条件を追加して検証実験を行った.これにより,1人の実験参加者における検証実験の工数が増加したため,2023年度内に必要なデータ数を取得することができず,2024年度に不足分データ分を実験するために必要な予算を確保した.以上の理由により, 2023年度に実施できなかった実験を追加で行うため,次年度使用額が生じた.
|