2020 Fiscal Year Research-status Report
Research of preparation conditions of made-to-order variable viscosity enteral nutrient for feedback to nursing care.
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20K12770
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
淺香 隆 東海大学, 工学部, 教授 (50266376)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | pH粘度可変型栄養剤 / アルギン酸ナトリウム / 凝固剤 / タンパク / カルシウム / 人工胃液 / 粘度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はCOVID-19の感染蔓延に伴い当初計画通りに研究を推進できなかったが、「タンパク含有濃厚栄養剤が人工胃液により凝固する」要因調査を目的に、①タンパク(コラーゲンペプチドと卵白)水溶液、②タンパク含有食品(スキムミルクと大豆プロテイン)水溶液、凝固剤である③アルギン酸ナトリウム水溶液について、①+③または②+③との反応、①+③混合物と人工胃液(pH1.2および4.0)との反応を調査した。 予備実験としてpH1.2やpH4.0の人工胃液へ①を加えたが凝固しなかった。つぎにタンパク含有量を5%に調製した①へ③を体積比4:1となるように混合したが、その粘度はControlの0.8%-③とほぼ変わらず約28mPa・s(37℃)であった。つづいて①+③とpH1.2の人工胃液を体積比5:3となるように混合し37℃で1時間震盪撹拌を行った後、開き目600μmの篩で濾過するとコラーゲンペプチドの場合は細かいビーズ状、卵白の場合は粘度約4.9Pa・sの白い凝集体が残渣として生じた。なおpH4.0の人工胃液では凝固しなかった。 さらに、タンパク含有量を5.3%に調製した②へ③を体積比4:1となるように混合すると、粘度はスキムミルクでは425mPa・s,大豆プロテインでは91mPa・s(いずれも37℃の平均値)となった。双方に含まれるCa量はほぼ変わらず、この原因はスキムミルクに含まれるカゼインのリン酸CaからCaイオンが電離しアルギン酸ナトリウムとイオン架橋して粘度が増加、一方、大豆プロテインにCa源として添加されている炭酸カルシウムは水溶液中でごくわずかしか電離しないため、スキムミルクに比べ粘度が低くかったと考えた。よって、粘度可変型栄養剤を自己調製する際には、栄養剤のCa量のみならずタンパクの由来(乳、植物、アミノ酸)についても考慮する必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度はCOVID-19の感染蔓延に伴う二度の緊急事態宣言発令により、主務である教育が全てリモートとなったために準備等の負荷が大きく、当初充当予定であった研究活動のエフォートを満たすことができなかった。また研究協力者である大学院生も大学へ入構できず、結果として最低限の基礎研究に終わってしまった。 現在、徐々にではあるが液体栄養剤と種々の凝固剤を組み合わせてpH粘度可変型栄養剤を自己調製し、人工胃液との反応状況を調査している。なお、自己調製したpH粘度可変型栄養剤の粘度は一定温度で測定する必要があるため、高低温サーキュレーターを2020年度予算で購入した。さらにカテーテル通過時の滞留や残留、詰まり等に関する調査を次年度以降に開始できるように、経腸栄養ポンプも2020年度予算で購入した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度計画の遅れを取り戻すことが第一であるが、可能であれば粘度可変型栄養剤の原料である市販の濃厚栄養剤や凝固剤であるアルギン酸ナトリウムの種類を増やし、栄養剤と凝固剤との反応をはじめこれら自己調製したpH粘度可変型栄養剤と人口胃液との反応についても、その条件や機序を明確にしていく予定である。また、栄養剤と凝固剤との反応は、粘度やテクスチャー指標をパラメータとし、経腸栄養ポンプ(購入設備)を利用して経管(経鼻・胃ろう)栄養チューブの種類(管径)と管内残留量(質量)との関係を明らかにする予定である。 なお、凝固する試料に構造破壊(ダメージ)を与えずに粘度変化が捉えられる音叉振動式レオメーターは、研究の進展に伴い今年度あるいは次年度購入する。そして試料温度を体温相当の37℃一定とできる高低温サーキュレーター(購入設備)と組み合わせ、加齢や制酸剤利用による胃液のpH上昇も考慮して、人工胃液のpHや栄養剤の種類や濃度が凝固や離水の発生にどのように影響を与えるかを明らかにし、調製条件を把握する。 2022年度は最終年度であるが、自己調製した粘度可変型栄養剤の原料である市販の濃厚栄養剤と凝固剤の種類ごとに、凝固時の離水抑止効果の原因を明らかにすると共に、「離水が生じない粘度可変型栄養剤の自己調製手法」を確立する。具体的には令和3年度までの研究成果をもとに、市販の濃厚栄養剤と凝固剤の種類や組み合わせ、凝固剤濃度に対する物性測定・評価結果を総合的に解析する。さらに在宅介護の場で安全に提供できるような調製条件をデータベース化し、本研究成果を患者のみならず家族や介護・支援者、医師や医療従事者が市販の粘度可変型栄養剤を選択する場合や、オーダーメイドの粘度可変型栄養剤を自己調製する際の指針を明示すべく、インターネットのホームページを通じて 情報発信する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度はCOVID-19の感染蔓延に伴う二度の緊急事態宣言発令により、研究活動が遅滞したために、研究用材料を逐次購入することができなかったこと、さらに研究協力者である大学院生も大学へ入構できなかったために、人件費・謝金を支弁する機会がなく、結果として143,890円を次年度に繰り越すこととなった。 次年度使用額と翌年度請求の助成金と合算して、研究推進のための人件費や消耗品等の購入に充当する予定である。
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Remarks |
これまで交付を受けた科研費研究にも関連する「イオン化コントロール法によるカルシウムを含む無機―多糖類複合ゲルの作製」に関して、無機マテリアル学会より「学術賞」を受賞した。
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