2020 Fiscal Year Research-status Report
Building semantic basis of information design and graphics
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20K12782
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 有理 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90750480)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視覚表現 / 否定 / コミックイラスト / 写真 / 実世界データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、情報伝達における視覚表現・グラフィック表現の意味論的基盤を構築することを目的とする。情報伝達様式としてのグラフィックスは、言語と比べて体系的な 形での研究が不十分であったが、近年、図的推論の学際アプローチが期待を集め、形式グラフィックス(例:集合論や幾何学における図形)に おいては、ある程度の成功をおさめてきた。本研究は、その方法をさらに充実させることで、自然グラフィックス(自然言語に対応)へと進展させる。具体的には、視覚表現の文法について、論理学の手法を基にした理論分析と認知科学の手法を基にした実世界分析を統合的に用いて研究を行う。
初年度である2020年度は、「否定」の認識に焦点を当て、それがどのような形の視覚表現において認識されうるのか、先行研究と関連付けた上でアイデアや研究方法の整理を行い、今後の研究展開を計画した。否定を視覚的に表現しうる実世界の様式として、写真画像、動画、コミックイラストをとりあげ、以下のことを議論した。写真は、典型的には一枚の単位で与えられ、 背景知識や文脈の助けを借りることによって否定情報を表すことができる。背景知識や文脈は、写真画像を時系列順に複数枚提示する動画の形式にすることで自然に伝達することができる。さらに選択的に否定情報を伝達するために、デフォルトの画像に対して人工デバイス(例:破線によって対象物の輪郭を囲む)を付け加える技法が、コミック・マンガのイラストにおいて典型的にとられる。こうした分析を行った上で、写真とコミックイラストを具体的な題材として、実世界データの詳細な分析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトを展開する上での準備が整い、今後の道筋を定めることができたという点で、今年度の最低限の目標は達成し、一定の成果を得ることができた。この成果は、"Depicting negative information in photographs, videos, and comics: a preliminary analysis" と題した査読付き国際会議論文としてまとめ、Diagrams 2020国際会議において発表した。また、形式的な視覚表現に関する近年の展開を『論理の図形表現』と題するレビュー論文としてまとめ、『認知科学』に受理・掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った否定を視覚的に表現する様式についての分析をもとに、写真とコミックイラストを具体的な題材として、実世界データ分析を進める。速報版をいくつかの国際会議論文としてまとめ、できるだけ早く完成版のジャーナル論文の作成にとりかかる予定である。当初は「否定」以外にも他の様々な不確定情報を扱う予定であったが、「否定」ひとつに重要な問題が多くあることが分かったため、次年度も引き続き「否定」の可視化をプロジェクトの中心に据えることを計画する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(COVID-19)による学会・ミーティングの物理的開催の中止が相次いだため、旅費としての支出がなく、主に旅費項目に関して計画変更が大きく生じた。今後は物品費や人件費など、研究遂行に必要な費用として追加して使用する予定である。
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