2023 Fiscal Year Research-status Report
Ethical Evaluation of Information Disclosure and Shielding by Counterfactual Conditionals: Its Analysis and Proposal for it based on Modal Logic
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20K12784
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
細川 雄一郎 群馬県立女子大学, 文学部, 講師 (60853190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 情報の遮蔽 / 情報の開示 / 情報フロー / 様相論理 / 反事実条件文 / 直説法条件文 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、令和4年度に得られた推論エージェントの情報状態の更新を表す「情報更新遷移関係」とそれに対応する「情報更新様相」を備えたハイブリッド時制論理の情報論的拡張を、「情報の開示/遮蔽の倫理的評価」の基礎となる反事実的三段論法の形式化のために応用した。同時に、この反事実的三段論法の範例となる、河合香織『選べなかった命――出生前診断の誤診で生まれた子』(2018) における「もし出産前にダウン症だとわかっていれば、途中で中絶していたかもしれない/もし途中で中絶していれば、息子があの苦しみを苦しむことはなかったかもしれない/それゆえ、もし出産前にダウン症だとわかっていれば、息子があの苦しみを苦しむことはなかったかもしれない」という、問題の推論の形式化を試みた。
またこの間、並行して分担研究者となっている国際共同研究強化(B)「論理的「不一致」の解明」のプロジェクトにおいて、上記の反事実条件文推論の分析結果を応用し、次のような成果も得られた。時間発展の可能性に関わる反事実条件文の真理評価の不一致について分析する際、その分析の方法についても、D. ルイスによる「類似性」分析と J. パールによる「因果性」分析という二つの主流な方法の不一致がある。それに対して、本若手研究課題の昨年度の主要実績であり、上記の成果の基礎となった細川 (2023) が提案した最新の「時間性」分析によれば、「類似性」分析と「因果性」分析が「時間性」分析の2タイプの抽象化であると考えられること、これによって時間発展の可能性に関わる反事実条件文の真理評価の不一致も、統一的な仕方で分析可能であることの見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を遂行する過程で、以下のような当初の計画を超える結果や知見が生まれた。 ・本研究課題の目的である「情報の開示/遮蔽の倫理的評価」が、事後的で反省的な反事実条件文によってだけでなく、事前の予測的な直説法条件文によってもなされうるように、その論理学的形式化を拡張できたこと。 ・本研究課題の昨年度の主要実績である細川 (2023) が提案した最新の「時間性」分析によって、D. ルイスの「類似性」分析と J. パールの「因果性」分析が「時間性」分析の2タイプの抽象化であると考えられること、これによって時間発展の可能性に関わる反事実条件文の真理評価の不一致も、統一的な仕方で分析可能であることの見通しを得たこと。 ・本研究課題の直接の成果は人間という「自然エージェント」の情報-行為-倫理的評価に関する成果であるが、この成果と、現在いわゆる「説明可能なAI(explainable artificial intelligence, XAI)」の課題において重要視されている、AIの決定や判断、挙動に対する「反事実条件法による説明(counterfactual explanations)」、つまり、「しかじかのような入力情報があれば/なければ、しかじかのような出力情報を返していただろう」といった、「人工エージェント」の情報-作用-影響の説明に応用できる見通しを得たこと。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の直接・間接の諸々の成果を、できる限り国際的な学会発表や論文投稿の形で公表する。
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Causes of Carryover |
上記の通り、本研究では直接・間接に多くの成果が得られているが、それらをすべて学会発表や論文投稿の形で公表するまでには至っていない。それらの公表をできる限り国際的な学会発表や論文投稿の形で実現するため、学会参加費用や英文校閲費用の資金として使用する計画である。
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