2021 Fiscal Year Research-status Report
「刑罰の哲学」をめぐる自由と人権―近世イギリス哲学の視座―
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20K12787
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
渡邊 裕一 学習院大学, 付置研究所, 助教 (60848969)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 刑罰正当化論 / 受刑者の法的地位 / 拷問禁止 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、大きく二つの観点で研究を行った。第一は、刑罰の法哲学・法理学的観点からの説明に関する国内外の先行研究調査を行った。また第二は、17-18世紀イギリスの主たる哲学者の著作から、刑罰観を読み解く作業を行った。後者については、各々の哲学者が自覚的には刑罰を主題としていない著作や論稿についても調査対象とし、部分的に表れる見解を再構成することで、刑罰観の輪郭を浮き彫りにした。 本研究では「近世イギリス哲学」における刑罰の哲学及び歴史を主題としているが、前述の刑罰に関する法哲学・法理学的観点からの研究を通じて、18世紀啓蒙思想の時代に、ドイツやオーストリアなどの大陸ヨーロッパ諸国においても「拷問禁止」などの機運が漸進的に高まっていたという知見を得ることができた。また、さらにその前史として、中世以来の教会権力と国家権力が密接の結びついていた時期の、いわゆる「魔女裁判」における司法過程のどのような側面が後世に断ち切られ、またどのような側面が後世に継承されたのかを峻別する視角を得ることができた。 また、17-18世紀のイギリス哲学において、受刑者の法的地位に関しては必ずしも共通了解がなかったという知見を得ることができた。例えば、逃亡や脱獄が刑罰の加重要件になるのか否かについて、受刑者が何らかの債務を負っているという前提に立てば逃亡は債務不履行であり刑罰加重が正当化されるが、他方、受刑者は単なる強制力によって拘束されているという前提に立てば逃亡は刑罰加重の理由にならないといった違いがあると説明し得る。こうした観点から、幾人かの哲学者の刑罰観を描き出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度と同様に、世界的な新型コロナウィルス感染症の流行により、当初の計画の遂行が困難となっている。具体的には、海外渡航を伴う文献調査や学協会への出席が全く不可能であった。 また、所属部局が学内の情報インフラを運営する部門であった都合上、遠隔授業への対応等の学内業務の多寡も相まって、国内における調査や研究報告に参加する機会もほとんど確保できない状況であった。
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Strategy for Future Research Activity |
所属先が変更となり、研究基盤に不慣れな状況となっている。ただ、所属部局が情報インフラ部門を離れたことで、代表者自身のエフォート管理は好転すると予想される。 海外渡航を伴う文献調査や学協会への出席は、引き続き容易でない状況が続くと思われるため、ウェブデータベース、ウェブ会議システム等を活用して、実際に海外に出向かずとも可能な範囲で、調査や研究報告を遂行していきたい。 学協会以外の研究交流活動についても、ウェブ会議システム等を活用して対面以外の方法で行う環境も普及しており、自らがホスト役になる形で、従来とは異なる方法での研究交流を積極的に図っていきたい。また、既存の学協会での研究交流も、本研究の知見を向上させるうえで有益な機会も多いため、これまで以上に積極的な交流を推進したい。
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Causes of Carryover |
全世界的な新型コロナウィルス感染症の流行により、海外渡航および国内出張による調査や研究報告が事実上不可能となり、旅費を支出することができなかったため。 また、大学の業務における遠隔授業対応のため、本件研究に確保できる絶対的な時間の不足があり(エフォート確保の困難)、史資料の購入や物品の購入等もほとんどできなかったため。
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