2020 Fiscal Year Research-status Report
An Attempt to Interpret Michel Serres' Thought in the 1990s from the Concept of "Plural"
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20K12789
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
縣 由衣子 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター(日吉), 助教 (30847869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミシェル・セール / フランス現代思想 / エピステモロジー / 科学史 / 現代思想 / 認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスの現代思想家ミシェル・セールの思想における「複数」の概念に注目し、その哲学の横断的読解のモデルの構築を行う。現代社会において、「多」をめぐる概念は、社会に膾炙する一方で、その曖昧さは浮き彫りになりつつある。セールは、この「多」の概念の問題への打開策として、集団の中における複数の独立した個人の共在を表す概念である「複数」の概念を提示した。その上で、本研究では「複数」の概念をめぐる概念史を再構築し、セールの思想の位置付けを行う。これらを通じ、セール思想における「複数」の概念が、現代の日本における様々な背景を持つ人々の共生のあり方を理論的に示していることを明らかにする。 本研究の対象であるフランスの現代思想家ミシェル・セールの哲学の主軸の一つは、現代社会を象徴する重要性を有している一方で曖昧でもある「多」の次の段階に考えるべき概念として、「複数」の概念を提示することにあった。「複数」の概念は、多数のものがより独立し、自立した状態で社会や集団の中に点在していることを意味している点で、これらの長期的な共生を考える有効な理論である。この概念は、個人を特定で固有の文化や言語、国籍などに還元して捉えることが難しくなっていくであろうグローバル化社会において、さらに重要度を増していくことが予想される。その上で、西洋哲学におけるこれらの「多」の概念と「複数」の概念を歴史的に遡り、その中にセールの思想を位置付け、さらに、これを現代の日本社会に置き直す事で、様々な文化、言語を持つ個人の相互理解と共生を促す理論的枠組みがこの概念によって提示可能であることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響によって、渡仏調査が不可能な状況である。また同影響によって、研究成果の発表を計画していた学会が中止になったことに伴い、学会発表が遅れている状況である。また、COVID-19に伴う緊急事態宣言下で大学関係施設が使用不可能な危難が生じたことにより、研究室の利用及び資料の参照が不可能になった時期が重なったことによって、研究を進めること自体が困難となり、計画の実施が遅延している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、国内学会での5月の発表がすでに一件確定している。また海外学会についても開催状況によっては発表を一件予定している。発表後の研究成果については、随時論文の発表を計画中である。さらに、COVID-19に伴う海外渡航が現在不可能な状況であるが、可能になり次第随時渡仏し調査を行うこと計画している。 さらに、大学関係施設の利用に関しては、施設利用が再開されたため、資料を参照しながら研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響に伴う、渡仏調査の中止、発表予定学会の中止に伴い資金の支出が不可能であったため。2021年度も引き続き、渡仏調査の可能性を探りつつ、学会の実施状況に応じて学会発表の機会を模索する。海外学会に関しては、オンライン実施が計画されているため、実施状況に応じてその参加費等に支出する。
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Research Products
(2 results)