2021 Fiscal Year Research-status Report
The Formation of Aristotlian Natural Philosophy and Plato's Late Philosophy
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20K12790
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
松浦 和也 東洋大学, 文学部, 准教授 (30633466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アリストテレス / プラトン / 自然哲学 / 時間 / 場所 / 空間 / 受容史 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) プラトン『ティマイオス』とアリストテレスの自然哲学的教説との比較検討作業に従事した。その作業の中で発見されたことは、アリストテレスがプラトンを名指し、その議論を報告する記述は、しばしば正確さを欠くが、アリストテレスの自然哲学的議論の中で論点が飛躍しているように見える議論に、プラトンの著作に現れる論点を導入すると筋が通る場合がある、ということであった。もちろん、このような論点がアリストテレスによる名指しを欠いたプラトン受容の事例だとは断定できないものの、アリストテレスに対する何らかの影響があったか、二人の間で論点の共有が起きていたと想定することは可能だろう。 2) 本研究の補助作業として、プラトンとアリストテレスの技術(テクネー)把握を精査した。何かを制作する営みに技術を制限する点でアリストテレスの技術観はプラトンのそれよりも狭いが、説明能力や「ある」への言及を含む点で両者は共通する。もちろんプラトンとアリストテレスは「ある」理解が異なるものの、「ある」への視座自体は両者の想定する自然哲学においても求められている。 3) アリストテレスの内在的理解を進めた。a)「基体」や「基にあるもの」と訳されるヒュポケイメノンについて。特に、生成消滅とその他の変化を区分する際に用いられるヒュポケイメノンは認識論的なものと解したほうが文脈に整合する。b) 井上忠のアリストテレス解釈について。c) エウダイモニアについて。d) 『分析論後書』等で表明されるアリストテレスの学問的手法について。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎作業であるプラトンとアリストテレスの比較検討は順調に進行している。また、この作業と共に、アリストテレスの内在的解釈も深めることができている。ただし、新型コロナウィルスまん延による流通の混乱は研究遂行に必要ないくつかの書籍の入手を妨げている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、アリストテレスの自然哲学と後期プラトン対話篇との比較検討作業を続けていくが、両者にとって自然哲学に通底する基礎概念が「ある」に存するのであれば、やはりエレア派的な「ある」への連関も考慮せねばならない。とりわけ、本研究にとって重要だと考えられるのは、パルメニデスの断片後半に現れる自然哲学的思索である。この思索が、古典期ギリシアの自然哲学にどのように影響を与えたのか(あるいは与えなかったのか)、考察を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、必要図書の一部が入手できておらず、また、資料収集のための出張も制限されたため、次年度使用額が生じた。2022年度は必要図書の発注を進める一方で、社会情勢を鑑みながら、学外へ向けた資料収取を行っていく。
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